ブラック企業から生還しましたりょうたです。
僕は塾講師の時に正社員を経験していますが、すぐに正社員になったわけではありません。
実は正社員になる前に4か月間の『試用期間』と呼ばれる期間がありました。
試用期間自体は違法でもなんでもないですが、あからさまに給料が低かったりクビになったりなど労働者側が不快に感じる場面もけっこう多いとか。
そんな試用期間について法律面と僕の実体験をもとにまとめてみました。
会社によっては、採用してから一定の期間は、いわゆる「試用期間」として、その期間は賃金が低いなど、労働条件が異なる場合があります。(「研修期間」「見習い期間」「仮採用期間」など、会社によって呼び方は様々です。)
試用期間があることや、その場合の労働条件が異なることについて、働き始めてから初めて知るということがあっては困りますので、試用期間がある場合には、求人票や募集要項において、試用期間があることや、試用期間中の労働条件を明示しなければならないことになっています。求人票や募集要項を確認する場合には、試用期間が無いか、また、試用期間中の労働条件が本採用後の期間と異なっていないかなど、よく確認するようにしましょう。試用期間についての明示がされていなかった場合や、試用期間の記載がわかりにくい場合は、会社に確認をするほか、必要に応じて最寄りのハローワークや労働局(需給調整事業課(室)にご相談ください。
第2章 働き始める前に – 厚生労働省
試用期間については明確に定義があるわけではないですが、多くの会社では正社員にする(本採用)の前に、仕事に対するスキルや適性を見極めるために『試用期間』を設けることが多いです。
試用期間の呼び方や期間などは法律で決まっていないため、細かいところは会社により異なってきます。
ただし多くの(まともな)会社の共通認識としては試用期間とは『正社員にする前に見定めをする期間』という感じのようですね。
ただし賃金については少し注意が必要です。
第七条 使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第四条の規定を適用する。
一 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
二 試の使用期間中の者
三職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第二十四条第一項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であつて厚生労働省令で定めるもの
四 軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者
最低賃金法第7条最低賃金の減額の特例
基本的に給料(時給)が最低賃金を下回ることがありませんが、最低賃金法の中でその例外の一つとして試用期間中(試の使用期間中の者)もあるため、場合によっては最低賃金以下の条件で仕事をすることもあり得ます。
試用期間がある会社や求人については求人票や募集要項に記載があるのでよく確認したり可能なら会社に問い合わせるのも良いですね。

とはいえ、だいたいの会社は試用期間の給料を極端に下げることなく正社員とほぼ同じか少し下がるくらいが多い印象ですね。
逆にあからさまに試用期間中の給料が低い場合は注意した方が良さそうです。
会社に入るにあたって給料と並んでポイントになりそうなのが『社会保険』(健康保険と年金)
正社員であれば当然入るでしょうが、試用期間の場合はどうでしょう?
健康保険は①国、地方公共団体又は法人の事業所あるいは②一定の業種(※)であり常時5人以上を雇用する個人事業所では強制適用となっており、適用事業所で働く労働者は加入者となります(派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトでも、1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入させる必要があります。4分の3未満であっても、①週の所定労働時間が 20 時間以上であること、②月額賃金が 8.8 万円以上であること、③勤務期間が1年以上見込まれること、④学生ではないこと、⑤従業員数 501 人以上の規模である企業に使用されていること(500 人以下の企業でも労使合意があれば適用対象となります)の5つの条件を満たす場合にも、社会保険に加入させる必要があります。)。
第2章 働き始める前に – 厚生労働省
試用期間だからというよりは、正社員かどうかなど労働形態も関係なく労働日数や労働時間が条件を満たしていれば社会保険は原則加入するのが現状です。
少なくとも僕みたく試用期間中も正社員とほぼ同じスケジュールで働くような人は社会保険は加入するとみて間違いなさそうです。

とはいえ、僕は試用期間中に社会保険(会社の健康保険と年金)に入ってたことがないので、僕の場合は本来はアウトだった可能性もあります。
試用期間については僕も『学習塾』と『農業法人』で経験しているので個人的な経験ながら試用期間について以下でお伝えできればと思います。

僕は2011年11月に某学習塾に入社しました。
入社といってもいきなり正社員ではなくまずは『アルバイト』としての採用でした。
これが試用期間の位置づけで、入社の段階では『3か月』とのことで、この3か月間の様子を見て社員に上げるかどうかを判断するという話でした。
給料については正社員と違い、毎日労働時間を記録し時給(900円)をもとに給料をもらっていました。
ちなみにこの3か月の間は基本的に前に立って授業をすることはなく、研修担当(メンター)の上司について回って授業も後ろの席に座って見学という形をとっていました。

とはいえスーツを着てる以上は生徒からすれば講師には見えるので勉強に関して質問されたり普通に話しかけられたりしました。
最初のうちは生徒のコミュニケーションも試行錯誤の日々でした。
2012年1月をもって最初に言われた3か月が経ちましたが、3月からの年度切り替えのタイミングに合わせて「新年度からクラスを持とう」という会社の方針もあり、1か月試用期間を延長しました。
最後の1か月(2月)はある程度上司からの研修も受けてきたのもあって、3時間のうちの1時間など短時間ながら実際に生徒の前に出て授業もしました。
そして予告通り年度が切り替わる3月から正式に『正社員』にランクアップできました。
2012年3月からは僕も各教室に行ってクラスを持つようになりました。
実は僕が入社してから2週間後と半年後くらいに新入社員がいました。
前者が僕の1歳上(24歳)、後者が1歳下(23歳)の方でいずれも塾講師未経験だったようです。
この2人も僕とは別教科ながら同じように研修担当の上司の授業について回ったようですが、入社3か月で姿を消してどうも試用期間のうちに退職してしまったようでした。
詳しい事情は聞いてなかったですが、僕の1歳上の方の方は『態度が悪かった』とのこと。
(上司に対してか生徒に対してか詳細は不明)
後者の人は全く分かりませんが、かなりおとなしそうな印象だったので授業や生徒とのコミュニケーションに苦労した(もしくは苦労しそうと判断された?)のかなと思います。
会社から不採用を言い渡したのか自分から辞めると言い出したのかは定かではありませんが、いずれにしても試用期間をまっとうしても必ず正社員になれるというわけではないようです。
ちなみに、さらに翌年に3人の新人が入りましたが、この3人はいずれも試用期間をこなしたうえで無事に正社員になりました。
塾に関しては試用期間で研修はしっかりしつつも、ちゃんと会社に適応できるかなどを見極めていたようでした。

そして塾の後に転職した農業法人。
こちらも同じく正社員の採用を見据えつつ、まずは試用期間アリ(アルバイト)としての採用でした。
ただ、塾との違いは試用期間の具体的な期間は明言されなかったこと。
あくまでも仕事の様子を見て、『いける!』と思ったタイミングで正社員に上げるとのことでした。
塾で試用期間は経験済みだったので、「じっくりスキルを上げていこう」と思ってました。

おそらくこのスタンスが間違いで、のちに悲劇を産むことになりますが…。
農業法人には2016年の5月9日(GW明け)に入社しましたが、3週間後の5月30日に社長からクビを宣告されました。
社長や上司から仕事の上達具合に関して早い段階で小言は言われてたので、「このままじゃ正社員厳しそうだな…」と思っていましたが、まさかの3週間でのクビの宣告でした。
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
労働基準法第20条
第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。一 日日雇い入れられる者二 二箇月以内の期間を定めて使用される者三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者四 試の使用期間中の者
労働基準法第21条
僕の場合、さらっとクビ(解雇)と言っていますが、予告もなくいきなりだったり解雇予告手当などももらっていません。(あくまで働いた分の給料のみ)
とはいえ労働基準法の第21条においては『試用期間中』など一部例外もあるので僕の場合はグレーなところもありますね。
ちなみに過去の判例においては、
過去の判例において、試用期間中の解雇の相当性が認められた事由としては、以下のようなものがあります。
勤務態度が極めて悪い場合
正当な理由なく遅刻・欠勤を繰り返す場合
本人の履歴に重大な虚偽の事実があったことが発覚した場合
試用期間中に解雇はできる?試用期間の法的性質や注意点について解説!
過去の判例においても試用期間中の解雇も認められた例はあるそうなので、確率は低いでしょうが『試用期間中でも解雇などはあり得る』というのは頭の片隅には置いておいた方が良さそうですね。
- 試用期間について期間など明確な定めがあるわけではない。期間をとっても3か月の会社もあれば6か月の会社もあり様々
- 最低賃金法の定めで試用期間中の給料が最低賃金以下になることもあり得る
- スキルや会社と合うかを見極める期間なので上手くやれれば正社員になれるが、合わなかったりなどすると切られることもある(法的にどうかは置いといて)
- ちなみに僕は入社3週間、試用期間中にクビになった(おそらくレアケース)
試用期間については一律に決まっているわけでもないので、期間や条件など細かいところは会社により異なってきます。
とはいえ一律でないからこそ、ブラック企業にとっては悪用しやすいものでもあると考えられます。
求職者としてできることも限られてはくるでしょうが、入社前の段階で条件面や正社員になるタイミングや条件などは事前に確認しておくのが必須ですね。
何かあってからだといろいろ面倒ですから。