HSPのりょうたです。
去年2020年はテレビなどのメディアでもHSPが取り上げられることが多く、良くも悪くもHSPの知名度が上がった年になりました。
一方で、
- 情報量が増えすぎて間違った情報が増えた
- 情報の取捨選択が難しくなった
- カウンセラーなど一部現場で混乱が生じた
などの弊害もありました。
そんな2020年、SNS上などに突如現れたのが『HSE』(Highly Sensitive Extoversion)という概念。
簡単に言うと『外向的なHSP』だそうです。
ただ、このHSEは研究がされておらず研究論文も存在しないため、実はエビデンス(根拠)がない話だったりします。
そのためなぜHSEが広まっているのか、実に不思議な話なのです。
そんなHSEを研究目線でまとめてみました。
なお、今回の記事の話は『stand.fm』という音声配信アプリでも話しています
目次
HSEとは外向的なHSP
外部に能動的に働きかけるさま。他人に対して積極的な性格。対義語は「内向的」。
「外向的」の意味や使い方
外向的(な人)、外向型は、『外向き』『積極的』という意味合いだそうな。
HSEは外向型とHSPを掛け合わせた概念と言われています。
アーロン博士のサイト内の『内向性、外向性、そして非常に敏感な人』という項目でHSEに関して言及されています。
世間一般のHSPは『内向的が多い』と言われていますが、要は逆にイメージですね。
外向型は内向型より自分の考えや気持ちを話すことを好む
基本的には不特定多数に対してSNSで自分が発信しようとは思わないが、外向型は信頼する人たちと画像や日々の出来事を共有することは好き
外向型は、他の人たちと協力し合うことが好き
外向型は、電話に出ること自体に抵抗感は少ない(それでも知らない人からの電話にはあまり出たくない)
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは? ストレス緩和と仕事上のポイント
このように、話すことや人と接することが大好きな感じですね。
僕はこれらはほとんど当てはまらないので、おそらく内向型だと思われます。
なお、ネット上に出ているHSEもあくまでHSPの中の一部なので、DOESなどのHSPの基本的な性質はHSEだろうと同じようです。
HSEはエビデンス(研究実績)がない
Google検索やYouTubeなどでHSEを調べると、いろんな情報が出てきます。
ただ実は、HSEというのは研究の実績がほとんどありません。
実際研究論文を検索できる「Google Scholar」というサイトでHSEを調べてもHSEの論文は出てきません。

つまり、今の段階でHSEを発信するということは根拠のない話をしていることにもつながります。

ちなみに研究では「HSP=内向的」というのもちゃんとは実証されてないらしく、そもそもHSPと内向的や外向的は切り離して考えてるようです。
(一般の書籍で「HSP=内向的な人が多い」、表現していることが多いが)
確かにHSPと内向的・外向的は、違う次元の話ですからね。
一般書籍などでは活動的なHSPという意味合いで「HSS型HSP」(刺激追求型HSP)という言葉もあります。
ただ、このHSSに関してもHSEと同じく研究の実績はほぼありません。
(ゼロではないですが非常に少ない)
HSSはSNSでもよく見かけますが、使いどころは考えなければいけませんね。
HSPの研究サイトでも外向型の言及はありますが、
SNSや書籍では「○○型HSP」などの言葉をよく見かけます。例えば「HSS型HSP」は刺激希求性が高いHSP、「内向型HSP」は内向的なHSPを表すようです。実は、このようなタイプ分けの研究は全く行われていません。こうしたタイプ分けの妥当性も不明です。血液型診断のようにわかりやすいため、流行るのは納得できますが、研究にもとづくものではない点は留意すべきかもしれません。
HSPの功罪|研究にもとづくHSP情報サイト
これが研究者側の認識だそうです。
たしかに血液型診断みたく分かりやすい側面もありますが、確証がない以上は下手にHSEなどを扱うと間違った方向に行き逆効果になる可能性も高いですね。
ましてメンタルにも関わる話なので、なおさらエビデンスは大事にしなければいけない。
HSEの診断、チェックリストも出てきている

良くてもまだ仮説段階のHSEですが、一部のサイトではすでに『HSEの診断テスト(チェックリスト)』たるものも作られています。
繰り返しになりますが、HSEは研究実績がなく公式の情報もない状態です。
それなのに一部の発信者、カウンセラーがカウンセリングなどをもとに独自の解釈でHSEの診断テストを作ってしまっています。
この件について、大学院で心理学を専攻してた学生時代の先輩に相談したら、
本来、カウンセリングからのアンケートと言うのは事例研究と言う分類で概念研究ではない。
自分のとこのカウンセリング利用者はこういう傾向が多い→つまりHSEと言う概念だ!
????となる。
仮説ならわかる。だがそこからの研究の発展ないの見るとただの自論だろうね。
でも言ったもん勝ちなチャンスを逃さなかったのは強みなんだろか。
とのことでした。
おそらく心理学にある程度知識のある方であれば、ネット上にあるHSEの診断テストの違和感には気づけるはずです。
なぜHSEが出てきた?
2年の空白期間
さて不思議なのはアーロン博士のサイト内の記事でHSEの言及は一応ありましたが、それは2018年の話でした。

僕は2018年9月にHSPを知りましたが、その当時はHSEというワードは誰も使っていませんでした。
それが不思議なもので、2020年に入ってから急にSNSでHSEというワードを見かけるようになりました。

2020年といえばコロナウイルス流行し始めましたが、かといってそれだけでHSEがいきなり広がるものだろうか?
僕が気になってたのは、ちょうど2020年の春先頃から某HSPのYouTuber・ブロガーがHSEを発信し始めたということでした。
お金儲けのため?

なぜ2020年というタイミングでHSEが出てきたかは謎ですが、一つ分かったのはHSEを発信している人の多くが『(HSP向けの)カウンセラー』をやってること
(加えてビジネス系のサイトが多い)
その人たちが、

あなたはHSE型HSPかもしれません。
もしよければ私のカウンセリングを受けませんか?
と誘導してるのかなと各ページを見て思いました。
個人的にHSPをカウンセリングなどビジネスに使うこと自体は悪いことではないと思っています。
ただ、HSEという『未知』(実証されてない)のものをさもあるように(実証されてるように)発信しているのはどうなのかな?と思います。
少なくとも、アーロン博士のサイトにしか情報がない以上、話の広げようもないですからね。
ありもしないことをさもあるように…という点は、昔流行った「水素水」の商法を思い出しました(笑)

HSEを知れば知るほどHSPが悪い意味での『商売』として使われてる感じがして、闇を感じました…。
ちなみにHSEについて、発信者としては第一人者であろう某ブロガーにコメント欄でHSEについて
- HSEをどのように知ったか?
- エビデンスはどうなってますか?(研究論文読みました?)
と質問しました。

ちょっと納得がいかなかったので、この件についてもさきほどの心理学に詳しい学生時代の先輩に相談しました。
その方によると「単にカウンセリングのデータを使えば良いという問題ではない」とのことでした。
カウンセリングのデータなどをベースにしたうえで、相関関係や尺度を使っての実証するのが本来のやり方だそう。
(HSPなど心理学の研究者は必ずやってることらしい)

難しい話ですが、要は心理学特有の統計・データのとり方があるそうです。
おそらく鬱や発達障害なども同じようなことをやってる。
少なくともこのブロガーはちゃんとしたデータを取るのができてないです。
もしHSEを発信するのであれば、今のところは研究者のサイトか研究論文を引用するのが適切な手法ですね。
HSEの情報は真に受けすぎないようにしよう
正直今回の記事は前々から構想はありました。
とはいえ、金儲け狙いの一部の発信者やカウンセラーを批判する意味合いも少なからずあるので、書くことに躊躇がありました。
僕のブログも含めてですが、おそらくHSPの記事にたどり着く人の多くは何らかの悩みを抱えてる方が多いかと思います。
そういう人たちに対して、「あからさまに正しくない(よく分からない)情報発信をするのは失礼では?」と個人的に思いました。
今後の研究次第でもしかしたら外向型とHSPの関連性などが実証されて、本当の意味でHSEが実証される日も来るかもしれません。(かなり先の話でしょうけど)
ただ、何よりHSPの全貌がまだわかっていないのでHSEやHSSよりも、まずは大元のHSPに目を向け自己理解などすべきではないでしょうか。
今回のHSEの件で発信者としては『わけのわからないことを発信しない』ことを改めて学びましたし、情報を見る側として『最低限の知識やリテラシーは持っておくべき』だと改めて実感しました。
持とう!