新入社員が入社初日に辞める時代|退職代行の利用が示す「本当の問題」

新卒が入社初日に辞める時代|退職代行急増が示す「本当の問題」とは

著者:長池涼太(ブラック企業研究家)

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4月と言えば大学等を卒業して就職する新卒の方がたくさんいます。

でも、毎年ニュースで見るのがその新卒で就職した新入社員が入社即日もしくは数日で辞めてしまうというニュース。

たとえばハラスメントがあったなどブラック企業であればすぐに辞めるのも理解はできますが、調べてみると必ずしもそれだけではないようでした。

今回の記事ではヤフーニュースの記事をもとに新卒が入社後すぐ辞める問題、これから就職する学生はどのような心構えで就活、就職をすればいいか解説しました。

参考元の記事は以下のリンクより。

記事の著者
ブラック企業研究家長池涼太

ブラック企業研究家
長池 涼太

ブラック企業において過労死寸前の長時間労働やパワハラを経験。その経験をもとに大学などでブラック企業の実態やブラック企業で壊されたキャリアの再生方法等を解説。

なぜ新卒は入社初日に辞めるのか|理由を分類すると見えてくること

最近は退職代行絡みで新入社員の退職がメディアで取り上げられますが、今に始まったことではなく僕が学生のころからすぐ辞める若者はいたので、特に今の若者が昔よりよく辞めるというわけでなく、すぐ辞める若者は昔から一定数いたと思われます。

今回のニュースで挙げられていた退職理由を大きく分けると、2つのパターンがある。

なぜ新卒は入社初日に辞めるのか|理由を分類すると見えてくること

パターン1:会社側に明らかな問題がある場合

  • 入社前に合意した労働条件(年間休日数など)と実際が異なっていた
  • 求人票には「基本給〇〇万円+各種手当」と書いてあったが、実際の基本給が最低賃金を下回っていた
  • 休日出勤の必要性を事前に説明されていなかった

これらは、会社側の採用詐欺・労働条件の虚偽記載に該当しうる問題です。こういったケースで退職代行を使うことは否定しませんし、むしろ使うべきだとすら思う。話し合いが通じない相手に一人で立ち向かうより、専門機関に任せた方が身を守れる。

パターン2:本人の判断・準備の問題が絡む場合

  • 就活がうまくいかず、希望とは違う職種の会社に入社してしまった
  • 希望の配属、職種にならなかった
  • 「仕事内容に自信がなくなって」「自分には向いていないと1日目で思った」
  • 入社式の最中に上司に叱られた
  • 仕事の指示が曖昧で混乱した

こちらは少し話が変わってくる。必ずしも会社側が悪いとは言い切れない。加えて辞めるとしても、退職代行を使うべき状況なのかどうかは、冷静に考える必要がある

たとえば配属や職種が希望通りでなかったという意見は昨年以前も見受けられましたが、即戦力の中途採用ならとにかく、ポテンシャルで採用することが多い新卒採用で希望通りの配属や職種になることはそう多くはありません。特に大きい企業になればなるほどこの手の希望が通る確率は下がることが多いので、最初から配属などは希望通りにいかないこともあると割り切る必要もあります。

退職代行を使うことの「見えていないリスク」

退職代行を使うことの「見えていないリスク」

退職代行サービスについては、メディアが「利用者増加」というニュースを流すたびに、退職代行の利便性ばかりが注目される。しかし、退職代行を使うことで発生するであろうコストが、あまり語られていない。

リスク①:転職活動での説明が一気に難しくなる

転職活動では、必ずといっていいほど「なぜ前職を辞めたのか?」を問われる。これはどの業界でも、どの会社でも同じだ。僕も何度か転職の経験はありますが、面接で前職を辞めた理由は必ず聞かれました。

自分で退職手続きを進めた場合は、自分で考えて辞めて引継ぎなどの手続きも自分でやっているため退職の経緯を自分の言葉で説明しやすいです。退職の手続きから実際に退職するまで少し時間が空くこともあるので、その間に頭の中の整理もできます。

しかし退職代行を使った場合、早ければ即日で辞められるメリットがある一方で、細かい経緯を退職代行が行うため自分の手を離れています。そのため説明の一貫性を保つのが難しくなることもあります。加えてすぐに辞められるということは、言いかえれば準備期間がそれだけ短いとも取れます。

「(Q.早期に退職をして何か困ったことは?)(転職の際)辞めた理由を聞かれたり、早く辞めすぎたせいで書類審査が通過しないことが多かった。70社くらい希望を出して、面談までいったのが5~6社くらい」

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転職活動での説明が一気に難しくなるリスク

インタビューを受けた男性(3年前に新卒で入社し2カ月で退職)は、その後の転職活動について「70社くらい応募して、面談まで進んだのは5〜6社」と語っていました。もちろん全員がこのパターンになるわけではないですが、早期退職そのものが書類選考で弾かれやすくなる現実もあります。

リスク②:面接官の印象

これは僕個人の見方も入っていますが、採用担当者の立場から考えると、退職代行の使用は「自分で意思を伝えられなかった人」という印象につながることもあります。僕自身、涼しく生きるで「キャリア相談室」というサービスをやってたり立ち上げ以前からいろんな人のキャリア相談等に乗ってきました。時には自分が採用担当になったつもりで話を聞いたり、アドバイス等をすることもあります。

そこで感じたのが会社をすぐに辞めた、特に短期離職を繰り返す人を採用すると考えた時に前職を辞めた理由やいきさつの説明が不十分だと採用とはなりづらいと感じました。逆に言えば、採用したくなると感じた人は前職を辞めた理由もそうですし、短期離職だとしても納得のいく説明をしてくれることが多かったです。

コミュニケーション能力は業種・職種を問わず求められる。それが不安視されると、書類が通っても面接で詰まる場面が出てくる。

リスク③:退職代行業者の「法的グレーゾーン」

これを知らずに使っている人が多い。退職代行には大きく3種類ある。

種別残業代・有給の交渉法的安全性
弁護士・弁護士法人が運営できる安全
労働組合が運営できる安全
(ただし訴訟等は不可)
民間企業が運営法律上不可非弁行為になる可能性

民間企業が残業代の交渉などを行う場合、弁護士法に定める「非弁行為」に該当する可能性があります。利用者が罪に問われることはまずないですが、犯罪行為を行っている可能性のある業者に依頼するというリスクは認識しておいてほしいです。

退職の際、残業代などの「交渉」が発生することもありますが、交渉ができるのは弁護士や労働組合に限られ、この点は東京弁護士会も注意喚起の声明を出しています。

弁護士等でない者が、法律的な問題について、本人を代理して相手方と話をすることは非弁行為です。
 残業代は、労働基準法に基づき認められた労働者の権利です。そして、残業代の有無、具体的な金額の算定は、法律的な問題です。
 本事例では、業者は、本人に代わって、法律的な問題について話し合い(交渉)を行った結果、残業代が支払われることになっています。このような業者の行為は、非弁行為です。

退職代行サービスと弁護士法違反|東京弁護士会

現在、退職代行業者は国内に100社以上あるとも言われています。退職代行はここ数年で急増していますが、急増しているということは玉石混交ともいえます。もし退職代行を使うなら、民間企業運営ではなく弁護士または労働組合が運営しており、ある程度の実績がある業者を選ぶことをオススメします。

なお記事中に出てくる退職代行ガーディアンに関しては、運営元が労働組合法人が運営しており、運営もクリーンな印象なので、数ある退職代行業者の中でもいい部類と思われます。ホームページなどを見て運営会社や料金の振込先が「○○株式会社」などの表記になっていたり、「弁護士監修」「労働組合提携」といった文言があったら要注意です。

新卒で辞めてしまった方へ|意識してほしいこと

もしあなたがすでに新卒で早期退職していたとしても、それは終わりではない。

先述の取材を受けた男性は、転職活動で苦労はしたものの、最終的には「今は全然ストレスなく働けている」と語っている。早期退職の経験は確かに転職活動を難しくするが、説明の仕方と次の選択肢を正しく準備すれば、十分に巻き返せる

退職理由を「事実ベース」で整理する

感情的な説明ではなく、「採用条件と実態に相違があった」「健康上の理由で継続が困難だった」など、客観的な事実として伝えられるよう準備しよう。

面接でも必ずと言っていいくらい触れる内容ですが、仮に前職がブラック企業だとしても面接で悪口を言うのは控えましょう。

次の会社選びこそ徹底的にリサーチする

次の会社選びこそ徹底的にリサーチする

早期退職後の転職で最悪なのは、同じことを繰り返すことです。僕自身、ブラック企業に連続で入ってしまいましたが、一番の原因は僕自身の自己分析や会社分析の不足でした。口コミサイト、SNS、面接での逆質問など、使えるツールをすべて使って実態を確認しましょう。

特に面接は良くも悪くも会社や上司の雰囲気も出やすいです。圧迫面接や上から目線な面接官の会社は十中八九ブラック企業と考えていいです。

キャリアの「文脈」をつくる

キャリアの「文脈」をつくる

なぜその会社を辞めたのか、次にどういう仕事をしたいのか?この2点をつなぐ「文脈」がないと、面接官には「何となく辞めた人」に見えてしまう。短い在職期間でも、そこで気づいたことや学んだことを言語化しておこう。

来年就職する学生へ|会社に期待しすぎないことが自分を守る

来年就職する学生へ|会社に期待しすぎないことが自分を守る

来年、就職活動をする学生の皆さんへ。

入りたい会社に内定が出たとき、ワクワクする気持ちは当然だ。その感情を否定するつもりはまったくない。ただ、そのワクワクが強すぎると、現実とのギャップで必要以上に消耗することになる。

僕自身、会社の仕事もフリーランスとしての仕事も、自分の思い通りに進むのは多くて1〜2割程度です。残りの8〜9割は予想外の出来事や、思い通りにならないことの連続です。自分でコントロールしやすいフリーランスですらそうなので、会社員ならばなおさらです。

でも、これは決して諦めのスタンスではないです。「上手くいかない、思い通りにいかないことが普通」という前提を持っておくだけで、精神的な余裕が全然違うという話だ。就活や入社前に以下の点には気を付けましょう。

労働条件通知書を必ず確認する

内定後、入社前に「労働条件通知書」が交付される(法律上義務)。そこに書かれている休日数、基本給、手当の内容を、求人票と照らし合わせて確認しよう。相違があれば入社前に確認・交渉しましょう。

「こちらは新卒の人なんですけど、入社前に合意していた労働条件の通知書と実際に働いてみたら、年間の休日日数などが異なっていたことが入社後に分かって、不信感を覚えて退職を早期に決断した人」

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実際、入社してから実は年間休日が違ったみたいに労働条件の認識の相違があった件もあります。

「思っていたと違う」が起きる前提で準備する

どんな会社でも、特に仕事内容や社内の雰囲気は入ってみないとわからないことはあります。最初の数ヶ月は「知らないことを知る期間」と割り切り、判断を急ぎすぎないことも大切です。

会社に限らないですが、物事は期待しすぎると何かあったときの精神的ダメージが大きいです。最初から期待しすぎずにほどほどにしておけば、もしものことがあっても淡々としていられます。

辞める選択肢は常に持っておく、でも退職代行は最後の手段として

本当に追い詰められたとき、退職代行は有力な選択肢になります。ただ、「使いやすいから使う」という安易な利用は、後の自分のキャリアに響くこともあります。まず自分で意思を伝えることを試み、それが難しい状況(ハラスメント・退職妨害など)になったときの保険として認識しておくのが、現実的な使い方です。

新卒でも「即撤退していい」企業パターン4選|感情論ではなくリスクマネジメントの話

新卒でも「即撤退していい」企業パターン4選

「すぐ辞める若者は甘えだ」という声がある一方で、「若者が辞めるのは企業が悪い」という声もある。どちらも雑だと思う。大事なのは「環境リスクか、適応課題か」を見極めること。

先述までは新卒側の問題点を指摘しましたが、ここでは逆に新卒であっても即撤退・退職を検討すべき企業パターンを4つ整理する。

1.初日からパワハラ・人格否定がある

  • 「なんでこんなこともできないの」
  • 「使えない」

入社初日からこういった言葉が飛ぶ職場は、指導ではなく文化の問題だ。会社側も手探り段階であろう初日から出ているということは、常態化している可能性が高く、改善する可能性は低い。

なおこの点は僕が勤めた建設会社や農業法人も同じでしたが、実際改善することもなくパワハラを受け続けました。

2.労働条件が明確に違う

  • 聞いていた給与と実態が違う
  • 正社員と聞いてたのに実は契約社員だった(雇用形態が違った)
  • 固定残業代の説明がなかった
  • 「聞いていない」業務が大量についてくる

これは契約上の信頼破壊。入り口ですら誠実でない組織は、その後もトラブルになりやすい。

3.ハラスメントが放置されている

  • 怒鳴る上司が出世している
  • セクハラが笑い話になっている
  • 「あの人は昔からそうだから」で済まされる

これは個人の問題ではなく組織文化の問題。文化は1年では変わらないものです。すでにハラスメントが会社の文化に根付いてる可能性が高く、入社したあなたも被害に遭う確率が高いです。

4.体調に異変が出る

  • 動悸
  • 不眠
  • 出社前の吐き気
  • 涙が止まらない

これは理屈抜きで撤退基準だ。キャリアはやり直せるが、健康は戻らないことがある。

危険だから撤退するという英断

危険だから撤退するという英断

1~3は「環境リスク」、4は「身体のSOS」。どちらも「向いていないから辞める」ではなく、「危険だから撤退する」という判断であり、それは甘えではない。むしろ一度体を壊すとその後のリカバリーは大変で時間がかかります。僕自身も建設会社にいた時に上司に詰められすぎたストレスで過敏性腸症候群・胃腸炎を発症しましたが、転職先の学習塾でも長時間労働を発端に何度か再発していたり、10年以上った今でも胃腸が弱いままの感じはあります。

ちなみに「涙が止まらない」に関してはうつ病の初期症状ともいわれています。僕もブラック企業にいた頃に経験がありますが、特に何でもないときに涙が出る、止まらなくなったら要注意です。実際この後に体調をかなり崩してドクターストップがかかったこともあったので。

まとめ|新卒による退職代行の急増が映しているもの

退職代行の利用が急増していることは、単に「最近の若者は根性がない」という話ではないです。すぐ辞める若者は昔からいましたし、なによりそれは日本の採用慣行、労働環境、若者と企業の間にある情報格差を反映しています。

一方で、退職代行を「使いやすいツール」としてメディアが煽り、安易な利用を促すことにも問題があります。退職代行はあくまで手段であり、使い方と理由によっては、自分のキャリアに思わぬ傷をつけるリスクもあります。

ブラック企業研究家として会社の問題は会社の問題として批判する。でも、自分自身のキャリアを守るための判断は、冷静に、情報を持った上でしてほしいと思います。

なにより新卒がすぐ辞めてしまう問題は結局は「ミスマッチ」の問題であることが多いです。涼しく生きるではブラック企業での経験を起点にミスマッチ、不要な短期離職を防ぎ自らのキャリアを守るための講演、講座を開催しています。

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