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努力しても報われない?若者貧困とブラック企業は自己責任ではない

なぜ努力しても報われない?若者貧困とブラック企業の構造的リスク

著者:長池涼太(ブラック企業研究家)

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どれほど懸命に働いても、生活が豊かにならないどころか、心身ともに削られていく

こうした状況に苦しむ若者が後を絶ちません。多くの人はこれを「努力不足」や「選んだ会社の運が悪かった」という個人的な問題として片付けがちですが、「構造の問題」が見えてきます。

現代の貧困は、突発的な不運ではなく、特定のステップを踏んで進行する「再現性のある負の連鎖」です。それは個人の努力や資質では防ぎきれない「構造的リスク」として存在しています。本記事では、ブラック企業がどのように若者の未来を奪い、貧困へと作り変えていくのかを解説しています。

記事の著者
ブラック企業研究家長池涼太

ブラック企業研究家
長池 涼太

職業紹介責任者の資格所持。大学でのブラック企業に関する授業登壇の実績あり。当メディア涼しく生きる運営。

ブラック企業において過労死寸前の長時間労働やパワハラを経験。その経験をもとに大学などでブラック企業の実態やブラック企業で壊されたキャリアの再生方法等を解説。

ブラック企業は「珍しい存在」ではない

就職する前段階に問題がある

ブラック企業は、決して社会の片隅にある特殊な存在ではありません。むしろ、社会経験の少ない若者がキャリアの最初の一歩で最も足を踏み入れやすい「入り口」として機能しています。

「ブラック企業は『珍しい会社』じゃなく、学生が最初に入りがちな会社です」

若者がこうした環境を選ばざるを得ない背景には、教育格差という前段階の構造的問題があります。家計の厳しさから奨学金という名の借金を背負い、あるいは「大学や専門学校へ行きたい」と言い出せない環境に置かれた若者にとって、就職は「選択」ではなく「生存のための不可避な義務」となります。

ブラック企業の主なパターン・特徴

ブラック企業は珍しくない

その焦りや情報の少なさを突くのが、以下のようなブラック企業です。

  • 長時間労働/サービス残業: 労働力を際限なく搾取する。
  • 低賃金・昇給なし: 自立に必要な経済基盤を構築させない。
  • ハラスメントの常態化: 精神的な支配により、正常な判断力を奪う。
  • 教育・キャリア形成の欠如: 汎用的なスキルを授けず、他社へ移る武器を持たせない。

このように、ブラック企業は若者が社会へ出ようとする善意や必要性を利用しているのです。

特に長時間労働やハラスメントに関しては若者のキャリアを破壊するものはもちろん、若者を精神的に追い込んで自殺などに追い込むケースもあります。

「心の病」や「早期離職」は、自己責任ではない

心身のダメージとキャリアの断絶

「入口」を抜けた若者を待っているのは、心身とキャリアへの深刻な「ダメージ」という第2段階です。この段階で生じるメンタル不調や体調悪化を、世間は「個人のレジリエンス(復元力)不足」と切り捨てますが、それは大きな誤解です。

ここで『本人の問題(自己責任)』と言われがちですが、実際は環境由来です。

過酷な労働環境に長期間晒されれば、どんなに優秀な人間でも自己肯定感は低下し、心身は悲鳴を上げます。その結果として起こる「短期離職」は、本人の忍耐力不足ではなく、生命を守るための防衛反応に過ぎません。

しかし、この職歴の空白期間が「履歴書の汚れ」と見なされ、次なる就活への恐怖を生むことで、若者はさらなる「負の連鎖」へと引きずり込まれていきます。

僕自身も2016年に農業法人で社長にパワハラを受けてクビになりましたが、それ以降働くこと自体がトラウマになってしまい転職活動もままならない状態になってしまいました。僕の場合は結局フリーランスになりましたが、かれこれ10年間「雇用」とは無縁でここまで来ました。また、僕が転職等の相談に乗って面接の話を聞く限りでも、空白期間に関しては高確率で突っ込まれ、何かしらの説明が必要で、残念ながらマイナスに働くことが多いです。

空白期間ができた理由も長時間労働やハラスメントの被害に遭ったことがたとえ事実だとしても、それをそのまま面接等で話すと印象が悪くなることも多いので、心身の不調やキャリアの断絶が生じた時の立ち回りはかなり難しいです。

「選択肢」が奪われた結果としての貧困リスク

貧困リスクの顕在化

選択肢が奪われるとこうなる

このプロセスの終着点が、第3段階である「貧困リスクの顕在化」です。ここでの貧困とは、単に預金通帳の数字が少ないことだけを指すのではありません。人生における「選択肢」が物理的・精神的に剥奪された状態を指します。

  • 経済的困窮: 貯金ゼロの状態や、返済困難な借金の積み上がり。
  • 居住不安: 低賃金や不安定な雇用による、住まいを失う恐怖。
  • 非正規・低賃金ループ: ダメージを負った状態で、より条件の悪い仕事を選ばざるを得ない固定化。
  • 将来展望の喪失: 数年後の自分を想像できず、社会保障に頼らざるを得ない絶望感。

これらは、本人の怠慢の結果ではなく、ブラック企業という「装置」によってキャリアと心身を破壊された「結果」なのです。努力不足ではなく、『選択肢が奪われた結果』です。

年齢によって不利になることも

またこの手の貧困問題は『年齢』も重要なポイントになってきます。貧困支援の活動自体は個人・団体とも探せばある程度出てきますが「若者」「20代」と若年層に限られることも多いです

同じことは転職にも言え、企業としてはスキルも見つつ若者を欲しがる傾向にあります。特に異業種への転職を考える場合は30代以降になるとハードルが一気に上がるため、20代のうちに動いておかないと後々不利になることも多いです。

なぜ「自己責任論」は間違っているのか?

自己責任ではない

世の中に蔓延する「嫌なら辞めればいい」「選んだのは自分だ」という自己責任論は、若者と組織の間にある決定的なパワーバランスの欠如を無視しています。これは個人の資質ではなく「システムとしての欠陥」であるといえます。

格差の種類構造的背景
情報格差学生や若者は、入社前に企業の内部実態や労働法の実践的な運用を知る術が圧倒的に不足している。
立場の弱さ「新卒」や「第二新卒」という立場上、組織の不条理に対して「NO」を突きつけることは生存を懸けた賭けになる。
交渉力不足組織に対抗し、自身を法的に守るための知識や交渉経験を持たないまま、巨大なシステムと対峙させられている。

解決策:壊れる前に「出口」を見つける知恵を

ブラック企業と出口戦略

一度壊れてしまった心身や断絶したキャリアを修復するには、社会全体で膨大なコストと時間を要します。事後の対症療法的な支援も重要ですが、最も価値があるのは、被害を未然に防ぐ「予防教育」です。

「壊れてから支援するより、入る前に防ぐ方が圧倒的にコスパがいい」

若者が不条理な構造に飲み込まれないために、私たちは以下の3つの武器を授ける必要があります。

  1. 就活前の労働リテラシー: 働くルールと、守られるべき権利を知ること。
  2. ブラック企業の見分け方: 魅力的な求人広告の裏に潜む「危険なサイン」を察知する眼。
  3. 早期離脱・相談先の知識: 限界が来る前に「非常口」へ逃げ込む勇気と、公的機関、労働組合、NPOなどの頼り先。

これらは、過酷な労働市場を生き抜くための「生存戦略」です。たとえば労働リテラシーやブラック企業の見分け方は労働基準法など労働にまつわる法律(労働法)を知っておくことで自分の身を守ることにもつながります。

結論:未来のキャリアを守るために

貧困は、決して「自業自得」の結果ではありません。それは、教育の不備や奨学金の負担、そしてブラック企業という入り口から始まる「負の連鎖」が作り出した、極めて社会構造的な産物です。

若者自身が今の環境を疑う知恵を持つこと、そして保護者や教育関係者が「個人の努力」という言葉で問題を覆い隠さないことが、解決への第一歩となります。特に、進学を諦めざるを得ない環境にある子どもたちが、ブラック企業という唯一の選択肢に追い込まれないよう、社会的なセーフティネットと労働教育を機能させなければなりません。

私たちは、次の世代にこの「負の連鎖」を引き継がせてはいないだろうか? 構造を正しく理解し、予防の知恵を共有すること。それこそが、若者の未来と日本のキャリア形成を守るための、唯一かつ最強の処方箋なのです。

りょうた
りょうた

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