著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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「1月1〜4日に有給使おうとしたら、正月は有給認められないって言われた」
そんなポストが2025年12月にバズりました。
スーパーでアルバイトとして働く大学生によるXへのこの投稿は、1000万件以上のインプレッションを集め、賛否両論でした。年末年始やお盆といった繁忙期に休みを取りたい労働者と、人手を確保したい会社側の思惑がぶつかるのは、多くの職場で起こりうる問題です。今回は正月の話ですが、ゴールデンウイークやお盆休みなどの大型連休でも同じようなことが起きる可能性もあります。
会社が「忙しいから」という理由で有給休暇の取得を拒否することは、法的に許されるのでしょうか? この記事では、パートやアルバイトを含むすべての労働者が知っておくべき有給休暇の真実を、労働基準法などの法律を交えながら解説しました。

ブラック企業研究家
長池 涼太
職業紹介責任者の資格所持。大学でのブラック企業に関する授業登壇の実績あり。当メディア涼しく生きる運営。
ブラック企業において過労死寸前の長時間労働やパワハラを経験。その経験をもとに大学などでブラック企業の実態やブラック企業で壊されたキャリアの再生方法等を解説。
そもそも有給休暇は、パートやアルバイトでも使える「権利」です

まず理解すべき点は、年次有給休暇(有給)が会社の「恩恵」ではなく、労働者に与えられた法的な「権利」であるという点。そして有給休暇は正社員だけでなくパート・アルバイトにも付与されるとしています。
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法第9条

労働基準法第9増における「労働者」は正社員だけでなくアルバイト等も含むとされています。
(年次有給休暇)
労働基準法第39条
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
有給休暇は労働基準法第39条で定められており、正社員だけでなくパートやアルバイトであっても、以下の条件を満たせば当然に発生します。
- 雇入れの日から6ヶ月間継続勤務していること
- その期間の全労働日の8割以上出勤していること
有給休暇は、たとえ雇用契約書や就業規則に有給休暇に関する記載がなかったとしても、法律に基づいて認められます。また原則として、労働者は有給を取得する際に理由を会社に説明する必要はありません。
ただし、会社は有給休暇に「NO」を言える場合もある
有給休暇は労働者の権利ですが、無条件にいつでも使えるわけではありません。法律は、会社側にも例外的な対抗手段を認めています。それが「時季変更権」です。
労働基準法第39条第5項には、労働者から請求された時季に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と定められています。
つまり、労働者が希望した日に休まれると、事業が正常に回らなくなるほどの重大な支障が出る場合に限り、会社は休暇の時期をずらすよう求めることができるのです。しかし、時季変更権を行使するには、会社側が相応の努力をしたことが前提となります。たとえばシフトの調整をしたり、代わりに入る人を手配するなどですね。
では、スーパーの年末年始のような現場で「事業の正常な運営を妨げる」とは、具体的に何を意味するのでしょうか。法律の専門家によれば、ここから議論は非常に現実的な問題へと移っていきます。
焦点は「有給休暇の理由」ではなく「代わりの人がいるか」
では、法的な争点はいったいどこになるのでしょうか?それは労働者が休みたい理由(例:「旅行に行きたい」)の正当性ではありません。そもそも有給の取得理由は私用でも問題ありません。
裁判例などから最大の焦点となるのは、「代替要員を確保できるかどうか」です。しかし、ここで重要なのは、単に代わりの人員がいるかいないかだけでなく、「会社側が代替要員を確保するために、どれだけ努力したか」という点です。シフトの調整を試みるなど、会社が合理的な努力を尽くしてもなお人員を確保できない場合に、はじめて時季変更権の行使が検討されます。
Xに投稿した大学生のケースで言えば、裁判所はスーパーの繁忙期という状況に加え、その学生が担当する業務の内容、同じ業務をこなせる他の従業員の数、そして会社がシフト調整などの努力を行ったか、といった点を総合的に考慮するでしょう。
「いつ休みたいか」より「いつ申請したか」が重要になることも
法的な観点から見ると、申請の「内容」と同じくらい「いつ」申請したかが重要になることがあります。
かなり早い段階、例えば数ヶ月前に申請があれば、会社側もシフトを再調整したり、短期のアルバイトを募集したりと、代替要員を確保するための対策を講じる時間的余裕が生まれます。
一方で、繁忙期の数週間前や数日前といった直前の申請では、会社が対応するのは物理的に困難になります。その場合、会社側の時季変更権が認められる可能性は高まります。弁護士ドットコムの解説では以下のようにスーパーの例を挙げています。
逆に、直前の申請では対応が難しくなります。
極端な例ですが、鮮魚をさばけるスタッフが5人しかいないスーパーで、その5人全員が正月三が日に有給を取得したいと請求してきた場合、会社として全員を認めるのは現実的ではありません。
「正月の有給は認めない」スーパーのバイトが取得拒否されて物議、弁護士の見解は – 弁護士ドットコム
このように、希望通りに休暇を取得するためには、できるだけ早く申請し、会社に調整の時間を与える配慮が、結果的に自分の権利を守ることにも繋がるのです。

今回の件はいつ頃有給休暇を申請したかは言及されてないですが、11月など早い段階で正月の有給休暇を申請していれば拒否されるリスクも低かったかもしれません。拒否されたとしても会社が努力すればいい話なので。
そもそも有給休暇がない会社は論外
ここまで年末年始の有給休暇の是非について解説しましたが、変な話今回の話のもとになったスーパーもおそらく正月という繫忙期だから有給休暇を断ったわけで、他の平常時であればそのまま有給休暇を認めた可能性もあります。
その点では、世の中には時期に関係なく有給休暇を認めない、そもそも有給休暇が存在しない会社もまだまだあります。
2019年4月からは年に10日以上の有給休暇を付与される人は5日以上の有給休暇をとることが義務化されていますが、僕の元職場みたくそもそも有給休暇がない、話題にすら挙がらない会社もあります。
あくまで有給休暇は半年以上勤めるなどの条件を満たしていれば、申請すれば認められるもので今回のような年末年始の申請で拒否されるのは特殊なケースと考えましょう。
有給休暇は認めるのが基本線だが場合によっては例外もあり得る
有給休暇は法律で保障された労働者の強い権利です。しかし、それは会社の事業運営とのバランスの上に成り立っており、会社側にも休暇を認めるための「努力義務」が課せられています。
特に繁忙期に希望通りの休暇を取得するためには、まず職場の就業規則で休暇申請のルールを確認し、可能であればできるだけ早く計画的に申請することが成功の鍵となります。
みなさんの職場では有給休暇のルールはどうなっていますか?今回の記事で気になった方は確認しておきましょう。



