著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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仕事から帰ると、どっと疲れが押し寄せる。「社会人ならこんなものだろう」と自分に言い聞かせながらも、「これは本当に『普通』なのだろうか?」と思うことはありませんか。
実は、仕事による心身の消耗は、ある日突然やってくるものではありません。静かに確実に進行し、はっきりとした段階があります。もしあなたが過酷な労働環境にいるなら、そのサインに早く気づくことで自分自身を守ることになります。
この記事では、ブラック企業にいた時の感覚・経験をもとに心が壊れてしまう前に現れる「4つの危険なサイン」解説します。そして各段階で「今すぐできること」を具体的にお伝えします。

ブラック企業研究家
長池 涼太
職業紹介責任者の資格所持。大学でのブラック企業に関する授業登壇の実績あり。当メディア涼しく生きる運営。
ブラック企業において過労死寸前の長時間労働やパワハラを経験。その経験をもとに大学などでブラック企業の実態やブラック企業で壊されたキャリアの再生方法等を解説。
ブラック企業で壊れてるサインを見逃さないように

- 「なんだか最近、仕事の疲れがずっと取れない」
- 「まあ、みんなこんなものだろう」
そうやって日々の不調に蓋をして、やり過ごしてはいないでしょうか。多くのビジネスパーソンが感じるその慢性的な疲労感は、単なる「頑張りすぎ」ではなく、より深刻な問題の前触れかもしれません。
危険なサイン1:不調は「こころ」より先に「からだ」に現れる
燃え尽きの最も初期のサインは、精神的な落ち込みよりも先に、身体的な症状として現れることが多いです。しかし、これらは「少し疲れているだけ」と軽視されがちで、最も見逃しやすい警告でもあります。具体的には、以下のようなサインに注意してください。
- 眠れない、または夜中に目が覚める:寝つきが悪い、熟睡できないなど、睡眠の質が低下する。
- 下痢や腹痛、食欲の変化:胃腸の不調が続く、または食欲が極端に増減する。
- タバコやお酒の量が増える:ストレスを一時的に紛らわすための対症療法に頼りがちになる。
- 「めんどくさい」と感じることが増える:家事や趣味、友人への連絡さえ億劫に感じるようになる。
- ささいなケアレスミスが増える:これまでしなかったような小さな間違いが目立つようになる。
これらの身体的なサインは、あなたの認知や感情が「もう限界だ」と認識する前に、体が発しているアラームです。背景には、長時間労働や休みが取りにくい企業文化といった、個人の努力だけではどうにもならない職場要因が潜んでいることが少なくありません。この段階で気づき、対処することが、深刻な状態への進行を防ぐ鍵となります。
また、不思議なもので心や体に不調をきたすと仕事のパフォーマンスもどんどん下がります。僕も塾講師時代で入社3~4年目で過労のピーク時は新人の時にはなかったような初歩的なミスをすることもしばしばありました。
3行日記など何らかの形で自分を客観視する
「睡眠時間」「食事内容」「その日の気分」の3つを記録してみましょう。客観的なデータは、後で自分の状態を把握したり、専門家に相談したりする際に非常に役立ちます。何かを記録して書くだけでも自分を客観視することができます。
ちなみに僕はブラック企業にいた頃に、ヤフーブログで日記を書いていた時期もありました。社名等細かい情報はぼかしたうえで書いていましたが、出来事や自分の気持ちを書くと多少なりとも心が落ち着きました。
睡眠環境を小改善する
就寝1時間前はスマホやPCのブルーライトを避ける、スマホをベッドから離れた床に置くなど、小さな工夫から始めましょう。睡眠が健康管理には一番重要です。
適切な睡眠時間は人によりますが、例えば僕の場合は7時間を切ると頭がぼーっとしやすいです。人にもよりますが、7~8時間以上は睡眠時間を確保しましょう。
「減らす」戦術をとる
「禁煙」「禁酒」といった大きな目標ではなく、「明日はタバコを半分にする」「飲むお酒を1杯だけ減らす」など、達成可能な小さな目標を設定します。
危険なサイン2:「無力感」が判断力を奪い始める
身体的な不調を放置すると、次に内面的な消耗、つまり精神的なエネルギーの枯渇が始まります。この段階の中心的な感情は「無力感」です。
このステージでは、モチベーションの喪失、集中力の低下、そして「何をやっても無駄だ」「自分が悪いんだ」という自責の念が強くなります。ダブルブッキングや約束を忘れるといった注意散漫からくるミスのほか、周囲に対してイライラし、攻撃的になってしまうこともあります。
この段階で最も危険なのは、この無力感が正常な判断力を奪ってしまうこと。努力が報われない環境にいても、「ここで辞めるわけにはいかない」という自己犠牲的な思考に陥り、心身をさらにすり減らす選択をしてしまうリスクが高まります。

自己犠牲や我慢の思考が強いとブラック企業とはいえどなかなか辞められない。
「小さな勝ち」で自己肯定感を育む
「メールを1通だけ返す」「デスクの上の書類を1枚だけ片付ける」など、1日に必ず達成できる極めて短いタスクを設定し、実行します。無力感の中で「自分にもできた」という感覚を取り戻すことが目的です。
仕事の中でちょっとした成功体験を自分なりに実感しましょう。
相談の土台を作る
本格的な相談でなくても構いません。仕事の技術的な話であれば職場の同僚や上司などでもいいですが、体調などデリケートな話はかかりつけ医や社外の友人・知人、あるいはSNS上のコミュニティなどで、「最近ちょっと調子が悪くて」と軽く状況を話してみましょう。
あとになるほど助けを求める心理的なハードルは上がるので、ちょっとしたことでもいいので相談してみましょう。
危険なサイン3:気づかぬうちに「孤立」を選んでしまう

症状がさらに進むと、本来なら支えになるはずの人間関係を自ら遠ざけてしまうという逆説的な行動が見られるようになります。これは、継続的なハラスメントや過度の期待に晒され続けた結果、対人関係そのものがストレス源に感じられるようになるためです。
家族や友人との会話さえ億劫になり、嘘をついてでも予定を断るなど、社交的な集まりを徹底して避けるようになります。喜びや怒りといった感情の起伏が少なくなる「感情の平坦化」も特徴で、休日は何もできずにただ横になっているだけ、という状態に陥ります。
回復に不可欠なサポートシステムを、当事者自身が遮断してしまうこともあります。
- 支援ネットワークが切れて孤立
- 回復が難しくなる
孤立は、回復を著しく困難にします。一人で抱え込むことで、問題はさらに深刻化してしまうのです。
最低1人の「味方」に状況を伝える
家族でも友人でも、あなたが最も信頼できる人を1人だけ選び、「今、仕事でこういう状況にあって、とても辛い」と具体的に伝えてください。助けを求めるのではなく、ただ知っておいてもらうだけで構いません。
なお、僕の場合は高校の先輩や恩師に相談してていろいろ助けていただきました。
休暇取得の計画で「逃げ道」を作る
具体的に休みを取ることを考え始めましょう。有給休暇の残日数を確認したり、短期の休職制度について調べたりするだけでも、精神的な逃げ道が生まれます。
特に有給休暇は現在は年5日は使用者(企業側)で取得させることも必須になっています。
年次有給休暇は、働く方の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。
年5日の年次有給休暇の確実な取得|厚生労働省
このため、今般、労働基準法が改正され、2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
全般的に「有給休暇をとりましょう!」という空気感は僕が会社員をやっていた10年以上前と比べても強くなっているので、心身の状態から休暇が欲しい人はまず有給休暇をしっかり活用しましょう。
労働条件を記録し「武器」を準備する
残業時間を示すタイムカードの写真、理不尽な指示が書かれたメールやチャット、業務メモなどを保存し始めましょう。これらは後々、労働基準監督署や弁護士に相談する際の重要な証拠となります。
危険なサイン4:客観的な記録が「気のせい」という思い込みを打ち破る

残業時間、理不尽な指示が書かれたメール、業務メモなどを残しておくことは、万が一の際に専門機関へ相談する証拠となるだけでなく、より重要な意味を持ちます。それは、「自分の感じている辛さは、気のせいではなかった」という事実を自分自身に証明することです。過酷な環境に長くいると、私たちは「自分の頑張りが足りないせいだ」と自分を責めがちになります。客観的な記録は、その思い込みを打ち破り、自分自身を擁護するための最大の味方となるのです。
記録をつけるという行為は、無力な状況下でも自分自身でコントロールできる、自己肯定感を支えるための主体的な戦略なのです。
医療機関を受診する
ためらわずに精神科や心療内科を受診してください。専門医による診断と治療方針が不可欠です。「休職が必要」といった内容が明記された診断書は、会社との手続きを進める上でも重要になります。
自分では大丈夫と思っていても病院でも診てもらったら、思ってたより重症だったケースも多いです。僕も軽い気持ちで病院に行ったら、医者から「今日は仕事しないように」と医者からドクターストップがかかったこともありました。
休職する
無理に働き続けることは絶対にやめてください。診断書を会社に提出し、正式な手続きを踏んで休みましょう。心と体を回復させることに専念する時間が必要です。
労働問題として相談する
状況が少し落ち着いたら、労働基準監督署、労働組合、あるいは弁護士に相談することを検討してください。記録しておいた証拠が、ハラスメントや違法な長時間労働を訴える際に役立ちます。

事案や証拠などの状況によっては労働局が力を貸してくれる場合もあります。
最良の出口戦略は「小さな保険」を準備すること
バーンアウトは、ある日突然訪れるものではなく、静かに進行するプロセスです。だからこそ、そのサインに早期に気づき、小さな対策を積み重ねることが何よりも重要になります。
そして、最良の出口戦略は、追い詰められる前に「小さな保険」を準備しておくことです。この保険は、あなたがいつでも次の一手を選べる「自由」を与えてくれます。保険の中身は、以下の3つです。
- お金 : いざという時に数ヶ月は生活できるだけの「生活防衛資金」。
- 関係 : どんな時でも話を聞いてくれる、最低一人の信頼できる「味方」。
- 情報 : 労働基準監督署や心療内科など、専門家の助けを借りられる場所を知っておくこと。
焦る必要はありません。しかし、準備は今日から始められます。
今日から準備を始められる、あなたの「小さな保険」は何ですか?

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