著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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化粧品メーカーのD-UP(ディー・アップ)で女性社員が社長から罵倒されて自殺するという事件が起こりました。
「大人をなめるな」「野良犬」といったひどい言葉を浴びせられるという痛ましい事件でしたが、2025年9月の裁判において、和解が成立し一応のひと段落はしました。
ただ今回の件は他人事ととらえず、多くの会社で起こりえることだと認識はしていただきたいです。
事件の経緯
遺族の弁護士などによりますと、里実さんは2021年4月に化粧品メーカーの「ディー・アップ」に入社し、半年後に営業部に配属されました。
しかし、この年の12月、上司とのトラブルが生じ、里実さんは社長と面談するよう指示されました。
面談では社長から、およそ50分にわたって「お前、大人をなめるなよ」とか「1回帰っていいよ、自宅待機」などと叱責され、「世の中でいう野良犬っていうんだよ」と人格を否定する発言もされたということです。
2022年1月、里実さんはうつ病と診断されて休職しましたが、半年間の休職期間が終わると、退職扱いにされたということです。
この年の8月、里実さんは自宅で自殺を図り、一命をとりとめたものの意識が戻らないままおととし10月に25歳で亡くなりました。
化粧品メーカー社長の“パワハラ原因”で新入社員の女性自殺 1億5000万円支払いへ 東京地裁 遺族の思いは | NHK | 東京都
化粧品会社 D-UP に2021年4月に入社した女性新入社員が、社長からの度重なるパワハラを受けてうつ病を発症しました。発言は「大人をなめるな」「野良犬」など、業務指導とは関係のない人格否定を伴うものが中心で、長時間にわたって繰り返されていました。翌年1月に休職するも、自宅療養中に自ら命を絶ち、翌年に亡くなっています。
裁判と和解
遺族は民事訴訟を起こし、会社側が1億5000万円の損害賠償を支払うことで和解が成立しました。加害者である酒井満社長は、2025年9月10日付で辞任しています。
遺族の言葉
- 姉:「妹は将来化粧品会社を起業する夢に向かって努力していた。本来謝罪を受けるべき妹は亡くなっているが、良い結果になったと伝えたい」
- 母:「安全で職場環境の良い会社が増えることを心から願う」
今回の件に限らずですが、ブラック企業でなくなる人が出てしまうと本人が苦しかったのはもちろんですが、同時にその家族も苦しいでしょうね。
個人的には2015年に電通で高橋まつりさんが自殺した事件も思い出しました。
学生・若手社会人への注意喚起
この事件は「ブラック企業問題」「パワハラによる自死」という点で、2015年の電通・高橋まつりさんの事件を個人的には思い出しました。共通するのは、本人の努力や能力とは無関係に、上司の人格否定や過度な圧力によって心身を追い詰められてしまう構図です。
就職や転職を考える人にとって、以下は大事な視点です。
- 会社説明会や面接での違和感を見逃さない
経営者や上司の言葉に威圧的・高圧的な空気を感じたら要注意。 - ネットやSNSでの評判をチェック
社員の口コミや過去の報道は、会社の実態を映すヒントになる。 - 「熱意」や「成長」の名の下に人格否定をされていないか
指導とパワハラは違います。人格そのものを攻撃する言葉は、教育ではなく暴力。
特に面接は会社の良しあしを見極める絶好のチャンスです。僕が過去に勤めたブラック企業も面接中にゆとり世代をディスったり、終始高圧的だったりと不快感がありましたが実際に入社してもその雰囲気のままだったので、面接の雰囲気と職場や上司の雰囲気はかなり近いものとみていいです。
口コミに関しては真偽の問題はありますが、少なくとも現場のリアルをある程度でも見れる点では有益ですし、特に学生に関しては一般的な就活イベントだと会社や職業の良いところ・きれいごとしか聞けないことも多いです。口コミもそうですが、もし知り合いで社会人の方がいれば実際に仕事の話を聞いてみても良いかもしれません。

似たような状況に陥ったときにできること
今回のD-UPの件では、新入社員の女性が社長に恫喝される以前に、上司に大声で悪口を言われていたという情報もありました。
会社では上司に大声で悪口を言われるなど周囲との人間関係に悩み社長との面談を行いましたが、社長は里実さん以外の従業員の話を前提に話を進めたうえ、「大人をなめるな」などと叱責(しっせき)したということです。
「生きてる間に謝ってほしかった」 女性自殺で遺族に1億5000万円支払い 社長辞任 | khb東日本放送
パワハラなどを受けた場合、まずは基本的に社内の「相談窓口」に駆け込むことを推奨されますが、今回に関してはハラスメント等の窓口が仮に設けられていたとしても窓口の担当と上司がグルであったり、情報漏洩のリスクもあるため窓口は少し怖いと感じました。実際に僕が情報をいただいた茨城県内の某ブラック企業でも、パワハラ上司と窓口の人がグルでパワハラ等がもみ消された会社もありました。
こうなると社内で立ち回るのも怖いので、外部の労働組合やユニオン、退職を考える場合は退職代行の活用も視野に入れたほうが良さそうです。

ただし退職代行については業者によってピンキリであったり、非弁行為・違法行為にあたる業者もあるため、労働組合もしくは弁護士が運営しているものを選びましょう。
まとめ
D-UPの事件は、若手社員が夢を持って入社したにもかかわらず、経営者のパワハラによって命を奪われた痛ましい事例です。和解や社長辞任で表面的な決着はつきましたが、根本的な再発防止策は社会全体で考えていく必要があります。
これから社会に出る学生や転職を考える方は、「会社選びは命を守る選択」 であることを心に留めてください。ブラック企業やパワハラ体質の組織を避けることは、キャリア形成以前に自分の人生を守る第一歩です。