著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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「奨学金って、結局いくら借りて、卒業後どう返すの?」
学生本人も、進学を考える親御さんも、ここが一番モヤっとするポイントだと思います。
奨学金は『悪』ではありません。でも仕組みを知らないまま使うと、社会に出てからジワジワと効いてくる負債でもあります。
この記事では、奨学金の基本から、返済がきつくなったときの現実的な対処法まで、まとめて解説します。

ブラック企業研究家
長池 涼太
職業紹介責任者の資格所持。大学でのブラック企業に関する授業登壇の実績あり。当メディア涼しく生きる運営。
ブラック企業において過労死寸前の長時間労働やパワハラを経験。その経験をもとに大学などでブラック企業の実態やブラック企業で壊されたキャリアの再生方法等を解説。
奨学金の仕組み|「借金」と「支援」は別モノ

奨学金は大きく分けて
- 返す必要があるもの=貸与型
- 返さなくていいもの=給付型
の2種類があります。ここを混同すると、後でダメージ食らいます。
貸与型奨学金とは(=原則返済あり)
貸与型奨学金は、卒業後に返す前提の制度です。有名なところだと日本学生支援機構(JASSO)による第一種奨学金と第二主奨学金があります。どちらも同じ貸与型ですが、返済の際の利子の有無に違いがあります。
- 第一種:無利子(成績・家計基準あり)
- 第二種:有利子(多くの学生が利用)
第一種は利子がないため、借りた額をそのまま返す。一方で第二種は借りた額に加えて利子も含めて返す必要があるので、人によっては返済総額がかなりの額になることもあります。
たとえば学生時代に月々3万円の奨学金を借りても、4年間で144万円になります。第一種ならこの144万円を社会人になってから返済ですが、第二種は144万円+利子なので返済期間やその時の利率次第で返済総額が代わります。
給付型奨学金とは(=返済不要)
給付型奨学金は、返さなくていい支援です。支給される額は貸与型と比べると少ないことが多いですが、社会人になってからの返済がないのは大きな魅力です。
ただし先述の貸与型と比べると支給のハードルは高めです。
- 対象者は限定的
- 成績など条件あり
- 貸与型と比べるとそもそも給付型奨学金自体が少ない
など給付型奨学金の支給は貸与型と比べるとハードルが多感です。「誰でももらえる魔法」ではない点、場合によっては対象者が限られる点は要注意。
大学の学費はどれくらい?(国公立・私立の目安)
国公立大学
国公立は私立に比べれば入学金や授業等は安い傾向にありますが、それでも年間数十万円はかかります。たとえば僕の地元にある茨城大学の入学金・学費は以下の通りです。
- 入学金:282,000円
- 年間授業料:535,800円(前期・後期で267,900円ずつ払う)
また公立大学の学費は少しパターンが変わります。東京都立大学を例にした学費は以下の通り
- 入学金:282,000円。ただし東京都民は半額の141,000円
- 年間授業料:528,000円
授業料は国立大学と変わりませんが、多くの公立大では大学の所在地の都道府県に住んでいる人は入学金が半額になることが多いです。東京都立大学でいえば10万円以上安くなるので、地元の公立大学への進学は学費の負担を抑えることにもつながります。

地元の国公立大学に進学し、かつ実家から通えばお金は最低限に抑えられそうです。
私立大学
私立大学は国公立大学と比べると学費等が高くなる傾向にあります。以下は同じく茨城県の私立常磐大学の入学金や学費です。
- 入学金:25万円
- 授業料(人間科学部・総合政策学部):74万円(前期・後期で半分ずつ納入)
- 授業料(看護学部):100万円(前期・後期で半分ずつ納入)
- 年間:130万~180万円(学部による)
入学金は先述の茨城大学と差がありませんが、授業料は1.5倍から学部によっては2倍にもなります。私立大学は特に授業料の額が国公立の倍以上になることが多く、授業料以外にも諸経費として設備費などいろんなお金がかかります。
また同じ大学でも学部や学科によって学費が変わることもあり、文系よりは理系の方が学費が高い傾向にあります。
ちなみに僕の母校でもある玉川大学は私立大の中でも学費が高い部類らしく、僕の出身の農学部ともなると初年度は入学金も含めて190万円、2年次以降も160万円が年間でかかります。一方で同じ玉川大学でも文学部だと初年度は約180万円、2年次以降は年間約150万円と学費は少し下がります。
そしてこれらはあくまで学費だけで一人暮らしをする場合は国公立大学同様に家賃や生活費も別途かかります。
卒業後の奨学金返済の流れ
返済はいつから始まる?
- 原則:卒業して7か月後から
- 毎月27日に自動引き落とし
社会人生活が安定する前から、固定費として毎月のしかかります。
たとえば僕が正社員の塾講師をやってた頃の手取りは18万円でしたが、うち2万3千円を奨学金の返済と手取りの10%ちょっとを費やしていました。毎月2万円を超える固定費と考えると決して安い額ではありませんでした。
返済期間はどれくらい?
- 短くて数年、長いと20年
- 月1〜2万円でも、長期戦
借りてた額によって返済の期間や返済の月額は異なりますが、短くても数年、安くても数十万円から100万円以上の返済になります。僕の場合は利子も込みで返済総額が500万円を超え、期間も20年という途方もない形になりました。
返済がきつくなったらどうする?詰む前にできること

会社員として安定した給料をもらっていれば返済は何とかなりますが、例えば昇給がなかったり退職をして収入が途絶える、フリーランスになり収入が不安定になると奨学金の返済の負担はより大きくなります。
奨学金の返済がきつくても決して無断で滞納してはいけません。その代わり一時的に月の返済額を減らしたり、返済そのものをストップする制度もあります。
減額返還制度
- 月々の返済額を減らす
- その分、返済期間は延びる
たとえば転職などして収入が下がって元々の額での返済はきついという方向け。月の返済額を「2分の1」「3分の1」「4分の1」「3分の2」のいずれかに減らして返済をする制度です。
申請の際、書類の記入などありますが条件としては収入、所得が一定以下であれば良いのでそこまで厳しいものではないです。
収入的に通常の返済はきついけど、後のことを考えると返済自体はしておきたい方向けです。
返還猶予制度
- 一定期間、返済を止められる
- 失業・病気・低収入時に利用可
先述の減額返還制度は月の額を半分などに減らしながら返済を続ける制度ですが、数千円などに減らしてそれでも返済がきつい方は、返済そのものを一時的に止める返還猶予制度を使いましょう。
こちらも減額返還同様に書類の申請や収入の条件はありますが、通れば一時的に月の返済がなくなります。
ただし、あくまで「猶予」であって後で返さなければいけない点は変わらないですし、返還猶予制度は10年、減額返還制度は15年という使える期間の上限がある点には注意しましょう。
奨学金を滞納するとペナルティがある
先述の通り奨学金は返還が難しいと感じたら減額返還や返還猶予などの手続きをしましょう。郵送が必要な場合もありますが、マイナンバーカードがあれば手続きもだいぶ楽になります。
一方で手続きをせずに奨学金を延滞すると主に以下のようなペナルティがあります。
- 年3%の延滞金が発生
- 債権回収会社等から、電話による返還の督促を本人や連帯保証人や保証人へ通知
- 3か月以上の延滞で個人信用情報機関に、個人情報を登録する対象になる
- 法的措置を執り、給与や財産を差し押さえ

原則、連帯保証人は父もしくは母、保証人は4親等以内の親族(父母を除く、おじ・おば・兄弟姉妹等)とされています。
消費者金融などほかの借金でも延滞すると似たようなペナルティがありますが、いずれにしても奨学金を延滞することもリスクが大きいです。
延滞した時の詳細は以下のJASSOのホームページ内でも解説されています。
余裕がある人は繰り上げ返還制度の活用もあり
ここまで金銭面で奨学金の返済が難しい人向けですが、仕事が軌道に乗るなどでお金に余裕があるのであれば早めに奨学金を返して楽になりたい
繰上返還では、返還額の全額または一部を繰り上げて返還することが可能です。
繰上返還申込み|JASSO
通常の返還と同様に、現在ご登録いただいている振替口座からの振替となります(手数料はかかりません)。
一部繰上返還を希望する場合、繰り上げを希望する上限金額もしくは希望する繰上回数のどちらかを選択してください。
金額でのお申し込みの場合、希望金額内で繰上可能回数を計算し、金額を調整します。
また、一部繰上返還をした場合、繰り上げた分の返還期間が短縮されます。翌月からの返還は通常通りです。
割賦金額が減額されることはありません。

繰り上げ返還は郵送もしくはスカラネット・パーソナルから申し込みが可能で、「繰り上げ返還でいくら返すか」もしくは「何か月分繰り上げるか」を選んで手続きします。
僕の場合は、会社を辞めた直後でお金に余裕があった時期なこともあり、「10万円分」の繰り上げ返還を申請して「98,318円」を繰り上げ返還しました。繰り上げ返還した場合、利息はカットされるためそのぶんちょっとだけお得です。この時でだいたい「16,000円」くらいの利息がカットされました。
僕の親世代(現60~70代)でバブルの恩恵を受けてたような人だと、ボーナスが出たら繰り上げ返還して20代のうちに奨学金を返し終わる人もいたそうです。
企業による奨学金返還支援制度という選択肢
最近は企業が従業員の奨学金の返済を肩代わりする奨学金返還支援制度もあります。
- 企業が返済の一部を肩代わり
- 福利厚生として実施
- 人材確保目的(特に中小企業)
必ずしも全額を肩代わりというわけではないですが、それでも半額などを肩代わりするケースが多いので自己負担はかなり減ります。制度自体は非常に魅力的ですが、まだ新しい制度のため導入している企業はごく一部に限られています。
奨学金とキャリアは切り離せない
奨学金や学費の話だけではなく、キャリアにも影響を及ぼすことがあります。たとえば奨学金の返済があることで以下のようなリスクもあります。
- 低賃金でも辞めにくい
- ブラック企業から抜けづらい
- 転職・休職の選択肢が狭まる
僕の場合、過労死寸前までいった塾もすぐには辞められず、辞めようと思ってから実際に退職するまでに2年かかりました。塾講師という立場上、生徒に情が移ったのもありましたが、一番の理由は退職することで収入がなくなり奨学金の返済が難しくなると考えたからでした。
状況によってはこのように奨学金が「人質」みたいな立ち位置になることもあります。必要な時に転職や休職などができなくなる可能性もあり、時には奨学金のために人生の可能性を狭めてしまいます。
奨学金の返還は学生のうちに考えておこう
- 奨学金は「悪」ではない
- でも「知らないまま」はかなり危険
- 返済が苦しくなったら制度は使っていい
- キャリア設計とセットで考えるのが超大事
奨学金があったからこそ大学に行けたなど、人生の幅を広げる側面もある点で奨学金は必ずしも悪いものではありません。
使い方次第で人生の足かせにも踏み台にもるということです。奨学金によってキャリアが広がるか狭まるか、違いを分けるのは「情報」と「準備」です。
これから進学等をひかえているお子さんがいる親の皆さんには奨学金に対する正しい知識と周到な準備を重ねてほしいと思います。
なお涼しく生きるではブラック企業だけでなく、このようなお子様、学生のキャリアを守るための講演、授業等の活動もしています。一緒にお子様、学生のキャリアを考えていきましょう。


