「DXで楽になる」は本当?現場目線で見るDX失敗の実例とリスク

「DXで楽になる」は本当?現場目線で見るDX失敗とリスク

著者:長池涼太(ブラック企業研究家)

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「DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入すれば、業務が効率化され、現場は楽になるはずだ」

多くの企業がこうした期待を抱いてプロジェクトを始動させます。もちろんDXを正しく活用すれば業務の大幅な効率化につながったり、従業員の負担も減るなどいいことづくめです。

しかし現実はどうでしょうか。ツールを導入した結果、「なぜか以前より忙しくなった」「入力作業ばかり増えて現場が疲弊している」というギャップに苦しむケースが後を絶ちません。何より僕の元職場もDXの導入以後は逆に労働時間・残業が増えたり、仕事量も(ムダに)増えたりとDXを導入してかえって状態が悪くなりました。

今回の記事では実例も交えつつ、DXを活用するポイントやDXでよくある失敗パターンを解説しました。

記事の著者
ブラック企業研究家長池涼太

ブラック企業研究家
長池 涼太

職業紹介責任者の資格所持。大学でのブラック企業に関する授業登壇の実績あり。当メディア涼しく生きる運営。

ブラック企業において過労死寸前の長時間労働やパワハラを経験。その経験をもとに大学などでブラック企業の実態やブラック企業で壊されたキャリアの再生方法等を解説。

DXしたのに失敗する会社が増えている

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か
⚫ デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、
データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと。
⚫ また、そのためにビジネスモデルや企業文化等の変革に取り組むことが重要となる。

中堅・中小企業等向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き|経済産業省

DXという言葉には「効率化」「働きやすさ向上」といったポジティブなイメージがあります。しかし現実には、DXを進めた結果

  • 「仕事が増えた」
  • 「残業が増えた」
  • 「現場が疲弊した」

という声も少なくありません。特に中小企業では、DXが現場改善ではなく負担増につながるケースが目立ちます。DX自体が悪いのではなく、やり方を間違えると失敗しやすいのが実情です。

DXの失敗とは?よくある誤解

トップダウンの傾向が強い企業にあるケースです。
経営層から「うちもDX化しろ」と言われてシステムの導入の検討と状況の報告を重ねていくうちに、システムを導入することがゴールとなってしまい、DXの本来の目的であるビジネス手法の改善に繋がらなかったものです。

中小企業によくあるDXの失敗事例って? | 店舗Linkle

DXの失敗は「ツール選定ミス」だけではありません。そもそもDXを「ITツールを入れること」「IT化を推し進めること」だと誤解していると、高確率で失敗します。DXとは業務や働き方そのものを見直す取り組みです。

目的が曖昧なまま進めるDXは、業務フローを複雑にし、現場の負担を増やす原因になります。「目的なきDXは失敗する」これが基本です。

現場が壊れるDXの典型パターン

中小企業のDX失敗には共通点があります。それは「現場に余裕がない状態でDXを始めること」です。人手不足、属人化、長時間労働が常態化している中でDXを導入すると、改善どころか混乱を招きます。

現場が疲弊している状態では、新しい仕組みを吸収する余力がなく、DXが負担増の引き金になりがちです。

現場が壊れるDXの典型パターン

DXで仕事が減るどころか増える

さらに「DXによって、業務に必要な工数が増えたと感じることはありますか?」と聞くと、「かなりある」19.9%、「多少はある」56.0%、「ほとんどない」22.9%、「まったくない」1.2%となりました。DXで業務が効率化したはずなのに、工数自体は75.9%が「増えた」と感じていたのです。

その理由ですが、紙や口頭で済んでいたものが、データ化必須になった(スキャンや入力などの手間が増えた)ことが背景にあるようです。なかには「システムが乱立しており、整合性をとるために工数が増えた」という悩ましい事例も寄せられています。

バックオフィス部門のDXに対する本音、業務効率化のはずなのに「工数増えた」と感じる人が過半数? | BizHint(ビズヒント)- クラウド活用と生産性向上の専門サイト

DXによって紙業務が減ったとしても、その代わりに入力作業、データ管理、チェック業務など新たな・別の業務が増えるケースは多いです。業務が「形を変えただけ」で、総量が減っていないためです。

特に現場では「前の仕事+新しい仕事」になりやすく、DXしたのに忙しくなるという逆転現象が起こります。これは典型的なDX失敗例です。

空いた時間に仕事を詰め込まれる

DXで業務効率が上がると、本来は余裕が生まれるはずです。しかし中小企業では、その余白に新たな業務を詰め込まれることが少なくありません。「効率化=もっとできるよね」という発想があると、忙しさは一切減りません。

結果として、DXしても現場の負担は変わらず、疲弊だけが残る形になります。

研修も説明もなく現場に丸投げ

この失敗の要因は、「現場の声を聞いていないこと」「現場の現状を把握せず施策を進めていること」にあります。
システムを実際に運用していくのは現場です。現場の実情を知らず、別部門のDX担当者だけで施策を進めていては、現場に合った最適なDXは実現できません。
よって、DXにあたって現場へのヒアリングは非常に重要だといえるでしょう。

中小企業でありがちなDXの失敗事例|人材確保に苦戦する理由や解決策を解説 – クラウド軍師

「これ導入したから使っておいて」と、十分な説明や研修なしにDXが進むのも失敗パターンです。特にITに強くない職場では、操作を覚えるだけで大きな負担になります。本来は会社側が支えるべき部分を、現場個人の努力に任せると、DXは成長ではなく消耗戦になります。

DXと同時に残業・休日出勤が増える

DX導入期は、設定や準備、トラブル対応などで業務が増えがちです。それにもかかわらず労働時間の見直しがされないと、残業や休日出勤が増えます。特に「家でやっておいて」が常態化すると、DXは働き方改革どころか逆行です。

DX後に労働時間が増えているなら、それは設計段階での失敗です。

DXがブラック企業化を加速させる理由

DXがブラック企業化を加速させる理由

DXはワンマン経営と相性が良くありません。トップダウンで一気に進めると、現場の声が無視されやすくなります。さらに「DX=成長」「DX=正義」という空気が強いと、反対意見を言いづらくなります。その結果、問題が表面化しないまま労働環境が悪化し、ブラック企業化が進んでしまいます。

「DXしたのに楽になっていない」「むしろキツくなっている」と感じたら、その感覚はかなり正確です。現場の負担は、数字より先に体感として表れます。違和感を「気のせい」「成長の痛み」と片付けると、気づいたときには限界を超えていることもあります。最初の違和感こそ重要なサインです。

【実体験】DX失敗の実例|DXがブラック企業を作ることもある

僕の元職場も典型的なワンマン経営の会社で、今でいうDX的な取り組みをしたらかえって労働環境が悪化し地獄を見たことがありました。以下では実例、何が起こったかを解説しています。

DXがブラック企業を作ることもある

元々はアナログな会社

僕が勤めていた塾は元々アナログな会社でパソコンはありましたが、当時新人の僕はそこまで使うものでもなく、会社のホームページも一応ありましたが、定期的な更新はあまりされていない感じでした。

それが僕が入社2年目になるタイミングで、社長の鶴の一声で突然DXの一環としてパソコン・ネット周りの刷新をしました。現場の我々としても1か月前くらいに聞いて寝耳に水の話でした。

元々がアナログ色の強い会社だっただけに、個人的には会社の雰囲気もがらりと変わったような感覚を持ちました。

DXをやったら労働時間がすごく増えた

DXをやると一般的には「残業時間が減る」「業務が効率化されて楽になる」など業務量が減る観点ではポジティブな話が多いです。ただこれもやり方次第です。

僕が勤めた塾ではDXを導入したタイミングからかえって残業などの労働時間が爆増しました。入社当初から残業はありましたが多く見積もっても月20~30時間くらいで個人的にはあくまで許容範囲な感覚でした。(平均して1日1時間くらいの残業)

休日も減った

仕事量が減ったと同時に休日も減りました

DXを導入した年までは年間休日105日くらいでしたが、最終的には年間休日80日まで減りました。年間休日80日ともなると、週休1日が普通になり、週休2日の週があるとラッキーだと感じたくらいでした。前述の労働時間や仕事量の増加もあり非常にハードな日々でした。

DX失敗から自分を守るためのチェックポイント

このようにDXは時として労働環境や業務効率をかえって悪化させる場合もあります。

DXが始まったときは、仕事量・労働時間・責任の所在を冷静に見てください。新しい業務だけ増えていないか、残業が増えていないか、不安を言いづらい空気になっていないか。これらが当てはまる場合、DXは失敗に向かっています。現場としては、まず事実を把握することが自衛になります。

DXの良しあしを測るポイントは以下の通りです。

  • DXの話が「急に上から降ってきた」
  • 「これで楽になるから」と言われたが、具体説明がない
  • 新しい業務が増えたのに、何も減っていない
  • 空いた時間=新しい仕事を振られる前提になっている
  • 研修・マニュアルがほぼ存在しない
  • DX後、残業・持ち帰り仕事が増えた
  • トラブル時の責任が現場に集まる
  • 人が増えないのに、求められる成果だけ上がる
  • 不安や問題を言いづらい空気がある
  • DXの話と同時に「気合」「成長」「やりがい」が増える

まとめ|DXが始まったとき、現場は何を見るべきか

DXは無条件に良いものではありません。やり方次第で、働きやすさを生むことも、ブラック化を加速させることもあります。大切なのは「現場がどう変わったか」を見ることです。おかしいDXは、ちゃんとおかしい。壊れてしまう前に気づき、距離を取る視点を持つことが、労働者にとって最大の防御になります。

一見会社にとっても労働者にとってもよさそうなDX。正しく使えば両者が得をしますが、使い方を間違えるとお互いが不幸になります。そして元々まともな職場(ホワイト企業)だったのに、いつの間にかブラック企業になっていることも…。

企業側はどのようにDXを導入すれば良いか?、労働者側はDXの良さと危険性を学んで本当の意味で良い職場を作っていきましょう。涼しく生きるでもそのお手伝いができます。

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