著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
SNSでは「会社を辞めてフリーランスとして(起業して)自由に働こう」「好きなことで生きていく」といった言葉があふれています。また最近では学生が起業したり、学生に起業を促す動きもあります。確かに、会社員時代の人間関係や理不尽なルールから解放される“自由”は魅力的です。
しかし実際にフリーランスとして数年間働いてみると、その裏には想像以上のストレスと責任が隠れていることに気づきます。この記事では、現役フリーランスの立場から「自由の裏にある現実」などよくある誤解とともに解説します。
会社を辞めて“自由になりたい”人に多い勘違い
先日X(旧Twitter)を見ていたら、こんな相談を目にしました。
「30代後半、年収300万円です。職場のストレスに耐えきれず、起業したいです。でも、お金もないし、スキルもないです。どうすればいいですか」と相談。 この人に起業を勧めるべきではないと思い「起業の方がストレスは多いですよ。転職は考えないのでしょうか」と伝えました。 すると衝撃の回答。 「あのね、この年齢じゃ良い転職はできないんですよ!学歴もないし、今さらスキルを身につけるために努力するつもりもないし、やりたいこともないんです! とりあえず、会社を辞めたいんです!今は生活のために仕方なく働いてるだけです! リスクもなく、どんな人でもすぐに稼げる方法を教えて欲しいと思って相談したのに、やっぱり社長は世間知らずですね。相談した方を間違えたようです」と。 ど、どうしろと。。
たまたま見つけたポストですが、実は僕もこれまでにいろんな方から「フリーランスになりたい」「起業したい」などの相談を受けたことがありました。
このポストの相談者のように「とにかく今の職場から逃げたい」と思って起業やフリーランスを考える人は少なくありません。ですが、「努力したくない」「とにかく逃げたい」の状態のままでは、独立後の方が確実に苦しいのが現実です。
なぜなら、フリーランスは誰も守ってくれないから。上司も同僚もいない世界で、売上もスケジュールも、すべて自分次第です。以下では、よくある3つの誤解をもとに、その現実を具体的に見ていきます。
フリーランス・起業のよくある誤解
「上司がいない=ストレスがない」
たしかに、上司や社内の煩わしい人間関係から解放されるのは大きなメリットです。理不尽な叱責も、意味のない会議も、もうありません。一緒に仕事をする相手なども選べるため、会社であるようなハラスメント等のトラブルも避けやすいです。しかし同時に、「誰も助けてくれない」「すべてが自己責任」という別のストレスが生まれます。トラブルが起きても営業がうまくいかなくても、全責任は自分。特に駆け出しの時期は、成果が出ない焦りと不安に常に付きまとわれます。
僕自身、たとえばライターをやったときは、納期に追われながら一人で夜通し記事を書いたこともありました。そのとき感じたのは、「上司がいない」代わりに「自分が上司であり責任者」だという現実でした。

たとえばWebライター、特に駆け出し・初心者の場合は、単なるライティングスキルだけでなく、依頼者との連絡調整など意外とやることが多いことにビックリするかもしれません。個人的にはWebライターは元々経験がある方を除いてフリーランス初心者にはオススメしません。
「好きな時間に働ける=自由」
フリーランスには出勤時間も残業もありません。朝が苦手なら昼から仕事を始めることもできます。ブロガーなどオンライン主体の仕事であれば家で仕事をしたり、逆に旅行気分でいろんな場所での仕事をすることも可能です。そのため、一見するととても自由そうに見えます。
しかし、自由な時間を作るには自己管理力が不可欠です。誰にも管理されない分、「いつでも仕事ができる」は「いつまでも仕事している」に変わりがちです。
私自身、気が付けば1日12時間以上働いていた時期もあります。自分が主体の仕事なので会社員の時のような過労みたいな感覚はあまりないですが、「会社員の方がまだ時間に区切りがあった」「会社員の方が仕事とプライベートの区切りが明確だった」とも感じました。
会社員は労働基準法で1日8時間の労働が上限が基本。でもフリーランスにはその制限がありません。やり方次第では労働時間(稼働時間)が減ることもありますが、逆に自由=無制限になるリスクがあるのです。

フリーランスの方がある意味働き過ぎのリスクはあるかも。
「自分で稼ぐ=気楽」
これが最も大きな誤解です。
会社員のように毎月固定の給料が入るわけではありません。もちろん頑張り次第では会社員以上に稼いだり、前月の倍以上稼ぐなども可能ですが、成果が出なければ翌月の収入はゼロになる可能性もあります。
「自分の力で稼ぐ」という言葉は響きが良いですが、裏を返せば「自分が動かないと1円も入らない」ということ。営業、経理や確定申告、広報、すべて自分でこなさなければなりません。会社でしたら、分業でそれぞれ違う人が担当することが多かったですよね。
もちろん、一人で全部やることによるやりがいや達成感もあります。しかし安定した収入を維持するためには、スキルよりも継続力とメンタルの強さが求められます。

特にお金周りの話は会社員とフリーランスで一番違いが出ますね。
自由の本質は「責任を持って選ぶこと」
フリーランスの自由は「何もしなくてもいい自由」ではなく、「自分で選び、動く自由」です。時間の自由も、働く場所の自由も、責任の上に成り立っています。
逃げるための独立は、ほぼ確実に失敗します。一方で、「スキルを磨いて、自分の働き方をデザインしたい」という前向きな準備がある人には、フリーランスは強力な選択肢になります。
自由は与えられるものではなく、つくるもの。それを理解した上で動ける人だけが、“自由をコントロールできる”働き方を手に入れられるのだと思います。
フリーランスに向いている人・向いていない人
フリーランス・起業に向いている人 | フリーランス・起業に向いていない人 | |
---|---|---|
主体性 | 自分で計画を立てて動ける | 指示がないと動けない |
向上心 | 学び続ける意欲がある | 新しいことを覚えるのが苦手 |
お金 | 収入の波を受け入れられる | 安定が絶対条件 |
孤独 | 一人で考えられる | 常に誰かと働きたい |
いずれも重要な話ですが、個人的には「向上心」はフリーランス・起業において特に重要だと感じています。冒頭のXでの相談者はこのように言ってました。
「学歴もないし、今さらスキルを身につけるために努力するつもりもないし、やりたいこともないんです!」
学歴はしょうがないにしてもスキルは行動を起こす、勉強などすれば年齢関係なく身につくことが多いです。
たとえば40歳代、50歳代でブログを始めて、ブログで稼げるようになった方もいます。このような人は自分が不利なことを分かった上でちゃんと行動したり勉強した結果稼げるようになりました。

学歴に関しても、社会人になってから大学や大学院に行くという方もいます。
もし今「会社が嫌だ」という理由だけで独立を考えているなら、まずは転職や副業から始めてみるのも一つの手です。焦らず、“選択肢を増やすための準備”をすることが、自由への最短ルートです。
いきなり起業する、フリーランス一本でやっていくのはリスクが高いですが、転職をしたり会社員をやりながらまずは副業でコツコツやっていけばリスクを最低限に抑えつつ、起業などに向けた準備もできます。
まとめ:自由は「楽」ではなく「選べる状態」
フリーランスや起業は、華やかに見えて実は泥臭い世界です。誰にも縛られない代わりに、誰も助けてくれない。
それでも自分の力で生きていく覚悟がある人にとっては、これほど面白い生き方もありません。
自由とは、「責任を取る勇気」と引き換えに得られるもの。その現実を知ったうえで、自分に合った働き方を選んでいきましょう。