著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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2025年10月18日に水戸市の私立水城高校で開催された「ワークルール教育に関する講義」の視察(見学)に行ってきました。
登壇したのは茨城大学人文社会科学部法律経済学科の松井良和講師で、昨年僕が茨城大学での授業に登壇した際の担当の先生でした。今回の講義は松井講師と松井講師のゼミの学生が主に労働時間に関する講義や実際にあった労働問題・裁判をもとに高校生にもディスカッションしてもらうという形式でした。
今回の記事の執筆にあたって松井講師と水城高校の担当の先生には撮影・記事の執筆の許可はいただいております。
松井講師による労働法の概要解説・講義


まずは松井良和講師より労働法全般に関する講義。世界各国と日本の労働時間の比較に始まり、今回は特に労働時間に年頭を置いた内容のため、これまでの裁判の判例をもとにした労働時間の定義を解説。

労働時間は使用者(会社)の指揮監督下に置かれてる時間と過去の裁判でもされており、後述の裁判事例でも触れていますが、着替えや事業所間の移動なども労働時間に含まれるとされています。
ディスカッション
次は実際にあった裁判事例をもとにディスカッションをして労働法を学ぶ形式。

まずは三菱重工事件。
(1)従業員は、①午前の始業時刻前に事業所内に入って、②所定の更衣所等において作業服等を装着して準備体操場まで移動し、③午前の始業時刻前に副資材等の受出し及び散水等を行い、④午前の終業時刻後に作業場等から食堂等まで移動し、また更衣所等において作業服等の一部を脱離するなどし、⑤午後の始業時刻前に、食堂等から更衣所等まで移動して作業服等を再び装着し、⑥午後の終業時刻後に作業場等から更衣所等まで移動して作業服等の脱離を行い、⑦手洗い・洗面・入浴を行った後に通勤服を着用し、⑧更衣所等から事業所外に退出していた。
(2)従業員は、所定労働時間外に行われた①~⑧の各行為が労働基準法上の労働時間に該当するとして、会社に対し割増賃金の支払を求めた。
三菱重工長崎造船所事件 最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決(労働時間) | 弁護士法人いかり法律事務所 【福岡】
着替えや作業場や食堂などへの移動の時間も労働時間に含まれるのでは?という裁判でした。
休憩時間や移動時間が労働時間に含まれるかが争点でしたが、こちらは最高裁までもつれ込んだ結果いずれも労働時間に含まれるという判決になりました。
また別の事件では会社での業務中にゲームやSNSの閲覧をしていたことに対して、その時間は労働時間と認められるのかという問題。

こちらも同様に事件の概要を伝えた後、高校生がディスカッション、意見を述べていましたが、少し難しい感じがしたり勉強時間に沿って考えるなど様々な意見や工夫が見られました。
結論としてはこちらも労働時間に該当するという判決でした。結局のところは会社のパソコンや自分の席で行っていたこと、上司などの使用者側が管理や注意が可能な状況にあったこと、労働時間と私的時間の明確な区別が法律上では難しいなどがポイントのようでした。
このようにどこまでが労働時間に含まれるかはよく議論、裁判にもなる印象ですが、現状は労働者に有利な結果になることが多いと思いました。

飲食店のアルバイトをする学生も多いですが、飲食店でも着替えなどが労働時間に含まれるかどうかはよく話題になりますね。先日もスキマバイトでの件が話題になりました。
学生による大学生活のリアル

最後に松井講師のゼミ生から大学生活の話もありました。たとえば高校の授業は時間割がきっちり決まっているけど、大学になると履修登録を自分でするため時間割も人によって異なったり、どの授業をとるかも自分で決めることができる。加えて夏休みや春休みなどもそれぞれ2か月くらいあるなど、大学生は高校生と比べると自由がきく要素も多い。
また部活やサークル、アルバイトなど高校と大学の違い全般についても数人の学生から解説がありました。聞いてた高校生が少しでも大学生活をイメージできたらいいですね。
まとめ
今回は「ワークルール」をテーマに高校生にワークルールについて知ってもらったり、労働時間の観点を中心に実際にどのような労働問題、裁判が起こっているかについての内容でした。
高校生の中でも特に大学に行くような生徒にとっては就職、働くというのが先のイメージを持つこともありますが、大学生になったら大半の学生がアルバイトをしますし、その大学生のバイトが労働問題の被害に遭うことも多々あるため、労働法に関しては早い段階で知っておいてほしいと思います。実際に茨城大学の学生数人で10万円単位の給与未払いも発生したくらいなので。
なお今回は法律を中心にしたワークルール、アルバイトに関する話でしたが、似たような形で僕も法律の要素も入れつつ僕自身のブラック企業の経験を伝えそれをもとにワークルールはもちろん「働くこと」に関して考えるような講演、講座を開催しています。ブラック企業、労働問題の講演、特にリアルな話が聞きたいという方はぜひ下記のリンクよりまずはお気軽にお問い合わせください。