著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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僕は2016年2月に4年勤めた塾を辞めました。
諸々の手続きはスムーズに進んだのですが、辞めて7年経ってもいまだに引っかかるのが『退職金』。
実は会社を辞めた後に離職票や給料などを取りに会社に行ってたのですが、そのときに経理から退職金の話が出ていました。
さらに求人票には
- 退職金制度あり
- 勤続3年以上(が条件)
とあり、4年勤めた僕は対象のはず。
結局その後会社から連絡が来ることはなく、退職金は自然消滅しました。
今さら訴える気などはないですが思い出したらモヤモヤしたり、ネットで調べたら意外と「あれ?退職金ってもらえないの?」みたいな事案が見られました。
今回は改めて退職金の支給について調べてまとめました。
退職金の支払いは義務ではない
退職金は支払われる会社があれば退職金がない会社も存在します。
実は退職金がないこと自体は違法ではありません。
少なくとも退職金の支給は義務付けられていませんからね。
特に地方の零細企業など小規模な企業になると退職金がない会社がほとんどです。
厚生労働省の退職給付(退職金)の統計によると社員の人数が少ない企業ほど、退職金がある会社の割合は減る傾向です。
地方の企業や社歴の短いベンチャー企業などの場合は、最初から退職金は期待しないほうがいいかもしれません。
逆に大企業はほとんどの企業で退職金があり、かつ勤続年数が多ければ退職金もそれなりの額になる。
退職金がもらえなかった
求人票の福利厚生の欄には退職金の文言があった
画像は僕が入ったころ(2011年9月)の求人票ですが、『退職金制度あり』という文言がありました。
勤続3年以上が条件でしたが僕は4年正社員として勤務していたので、勤務期間の条件は満たしているはず。
求人票の効力が未知数な部分があります。
特にハローワークは、実態と違う場合も多々あるので注意が必要です。
例えば僕がいた会社は年間休日105日と書いてあったのに、実際は80日くらいだったことがあるので。
就業規則には退職金の言及がなかった
入社時に就業規則は渡されて一通り閲覧しました。
休日や賞与については記載がありましたが、退職金については何も書いてありませんでした。
仮に僕が元職場に退職金の件を訴えていたとしても、「就業規則にないから」と一蹴されていた可能性もあります。
退職金に限らず就業規則は要チェック!
辞めるときに退職金の話はあった
僕は2016年3月半ばで塾を退職、厳密には出勤は2月までで3月は2週間有給扱いでした。
また、給料が手渡しだったため3月半ばに2月分の給料を受け取りに会社に行ったのですが、実はその時に経理から退職金の話は少し出ていました。
『向こう2年同業他社に転職しない』という誓約書にもサインをさせられました。
僕的には同業他社は考えてなかったので特に気にしなかったですが。
退職金の話は出ていたといってもあくまで「口頭」だったので、こちらもどこまで信用すればいいかは未知数です。
ちなみに「この誓約書にサインしないと退職金はもらえない(あげない)」といわれた気が…。
退職金が明文化されていなくてももらえるケースもある?
退職金がもらえる条件としては所定の勤続年数以上を働いたうえで、就業規則や労働契約書などの書類に退職金に関することが明文化されていることが基本的には必須です。
ただし例外的に明文化されてなくても退職金がもらえるケースもあるようです。
退職金制度は、必ず設けなければならないものではありませんが、就業規則等で具体的な金額や支払い方法などを定めている場合には、その規則のとおり支払わなければなりません。
具体的に規則として明文化してはいなくとも、慣行(または慣習)となっている場合には、支払われるべきものと思われます。
退職金はないと言われたのですが|茨城労働局
慣行の場合、就業規則のように具体的に支払われる金額や支払い方法などが定められていないため、退職金の支払いについて労使で争いとなることがあります。このような場合は、個別労働紛争解決制度を利用することも出来ます。労働局、もしくは、あなたの働いている事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナーへご相談ください。
仮に就業規則に退職金が明文化されていなくても慣行で退職した社員に退職金を払うことがあった場合は、退職金の支払いはした方がいいとされています。
そのため、自分の会社で過去に辞めた人が退職金をもらっていたかどうかをチェックするのも手かもしれません。
僕の知人のケースから考える退職金
今回の記事、さすがに自分の知見だけでまとめるのは心もとなかったので、知人で退職金について知ってそうな人を探しました。
結果、身近な知人で
- 退職金をもらった人
- 会社経営者
などがいたのでそれぞれに退職金について聞いてきました。
前者は退職金がもらえるパターン、後者は会社目線で見た退職金で解説しています。
知人①高卒で就職後4年で退職。退職金もらった
僕の知人で高卒で就職し、その後4年勤務して退職・転職した人がいました。
その人は退職後2か月くらいで退職金が振り込まれたそうです。
実は会社の書類も見せてもらいましたが、
- 労働契約書から各種規定、就業規則が完備
- 退職金については就業規則とは別に給与規定に退職金を支給する旨が記載されていた
- 会社の募集要項にも「退職餞別金」という文言で書いてあった
その他、退職金関係以外にも様々な書類がありかなりしっかりした会社の印象でした。
やはり就業規則(給与規定)に退職金のことが書いてあれば退職金がもらえる確率が高いようです。
会社によっては退職金規定もあるそう。
知人の会社は歴史が長く業界でも大手寄り。
歴史の長い会社は退職金含め諸々がしっかりしていることが多いですね。
知人②経営者。過去にハローワークに求人を出した経験がある
続いては僕の知人で会社経営をされている方で、去年ハローワークに求人を出した経験のある方。
その方曰く、
- 求人票の文言などはすぐに変えられるので退職金がもらえるかなどの効力・影響力は弱い
- 逆に就業規則や労働契約書は社員の同意が必須など変更が簡単ではなく、効力・影響力が強い
- そのため退職金の話が就業規則になく求人票のみだと弱い(訴えても退職金もらえるか微妙)
とのことでした。
調べると退職金に関しては裁判などになった例もあるそうですが、「就業規則に記載があった」のがポイントになっていることが多い印象です。
経営者、求人を出す側からしても求人票は変えやすいし、最悪嘘を書くこともできてしまう。
その点では昔の僕みたく求人票の情報だけですべてを判断するのはあまりよくないみたいです。
僕の塾の場合は、求人票には退職金の記載があり就業規則には一切記載がない。(雇用契約書は行方不明)
その点では、僕が塾に対して退職金のことで騒ぐのはある意味僕の早とちり的な部分もあったかもしれません。
辞めるときに経理の人から退職金の話は出ていたのでそこは引っかかりますが…。
知人③。退職金はなかったが確定拠出型年金が退職金代わり
こちらの知人は前の2人と比べると少し特殊で、全国展開している某企業に勤めて別の企業に転職しましたが、退職金はなかったそうです。
そのかわり『確定拠出年金』を導入しており、実質退職金代わりだったそうです。
確定拠出年金制度の概要|厚生労働省
- 確定拠出年金は、拠出された掛金とその運用益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。
- 掛金を事業主が拠出する企業型DC(企業型確定拠出年金)と、加入者自身が拠出するiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)があります。
投資の要素も少し入っていますが、毎月コツコツ積み立てていくため長く勤めればかなりの額になります。
加えて通常の投資であれば運用で出た利益に税金がかかりますが、確定拠出年金は運用益は非課税のため税制的にも良いです。
投資の要素がある以上、元本割れのリスクがゼロとはいきませんけどね。
また企業としても確定拠出年金はメリットがあり以下のようにあります。
確定拠出年金の主な導入効果|損保ジャパンDC証券
- 掛金の追加負担のリスクが生じません
確定給付型の企業年金制度と異なり、将来の運用状況等による掛金の追加負担が発生しません。- 退職給付債務の対象となりません
退職給付債務の対象とならないため、債務計算は不要となり、経営(バランスシート)における債務の変動リスクを軽減できます。- 拠出金はすべて損金扱いとなります
企業が負担する拠出金は、全額損金に算入できます。- 福利厚生制度を充実することができます
確定拠出年金は時代に合った制度であり、福利厚生の充実は人材の確保にもつながります。
場合によっては社員・企業の両方が得をするといえますね。
退職金でやること・確認すべきこと
僕の場合は会社辞めてからかなり時間がたっていて手遅れですが、辞めた直後など早い段階であればできることがいくつかあります。
就業規則や雇用契約書などに退職金の記載があるか
先述したように求人票の表記も大事ですが、求人票は希望的観測を含む場合もあったり、表記を変更することも容易です。
一方で特に就業規則は会社が一方的に変えることはできず、労働者の同意を得ることが必須です。
そのため就業規則に書いてあることの効力は大きく、就業規則に退職金のことが書いてあればもらえる確率も上がります。
良い会社は就業規則を配布してることが多いそうなので、手元にあれば要確認。
就業規則に記載がなく、求人票のみの記載だと微妙かもしれません。
退職金をもらえる条件を満たしているか
退職金は会社を辞めれば誰でももらえるわけではなく条件付きなことがほとんどです。
そして条件はほとんどの場合は勤務期間が条件を上回っているかどうか。
会社によりますが、多くの会社は『勤続3年以上』としています。
勤続3年以上とあったら、2年勤めて辞めたら退職金の支給対象ではなくなるので気を付けましょう。
退職金関係の相談先
退職金はないと言われたのですが|茨城労働局
慣行の場合、就業規則のように具体的に支払われる金額や支払い方法などが定められていないため、退職金の支払いについて労使で争いとなることがあります。このような場合は、個別労働紛争解決制度を利用することも出来ます。労働局、もしくは、あなたの働いている事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナーへご相談ください。
茨城労働局のHPにも退職金がもらえないことに関するQ&Aもあるので、労働局もしくは事業所の所在地管轄の労働基準監督署の総合労働相談コーナーが相談先になるようです。
少なくとも茨城県は退職金に関する相談実績があるそうなので、相談先としては無難ですね。
申出人は約18年間被申出人の事業所に勤務し、3か月程前に退職した。長く働いたので退職金が支給されるものと思い、被申出人に確認したが、連絡するので待て、と言われた。その後何度か督促を行ったが、前言の繰り返しでらちがあかない。どうしたらよいか、コーナーより確認して欲しい、として相談に訪れた。
助言・指導事例4退職金がもらえない|茨城労働局
被申出人に確認したところ「中退金に加入している。支給申請を行うにあたり、書類の作成に手間取っている。申出人本人に記入して貰いたいところもあるので、こちらから連絡する。」と申し述べた。
相談コーナーの助言により、その後、申出人、被申出人が話し合い、手続きが終了し、退職金の支払いが確定した。
SNSを見てると「労働基準監督署使えない!」という批判もありますが、あらかじめ話す内容を整理したり、証拠になりそうなもの(書類など)を持っていけば、ちゃんと対応はしてくれると思います。
退職金の請求は退職から5年で時効になる
退職金が出る立場であれば会社に連絡したり弁護士などを介して退職金を請求することも可能です。
ただし退職金の請求は『時効』があります。
退職金の請求権の時効は、労基法115条で5年と定められています。なお、退職手当を除く賃金、災害補償その他の請求権の時効は2年と定められています。
東京労働局
つまり退職金が請求できるのは辞めてから5年。
今回退職金の記事を書いている僕は、退職からすでに5年を超えているため時効が成立してしまっています…。
また、退職金以外に残業代もよく挙がりますが、残業代の請求は現在は3年が時効とされています。
2020年3月支払い分については、2022年3月の2年で消滅時効を迎えますが、2020年4月支払い分以降については、2022年4月を超えても3年は未払い賃金の請求ができることになります。
残業代請求の時効が3年に延長!いつから?中断させる方法を弁護士が解説|労務ネット
そのため残業を訴えてでも確実にもらいたい場合は早めの対処が必要になります。
今思えば退職金はあらかじめ
- 求人票や就業規則に退職金のことが書かれているか
- 辞める際に経理などから「退職金がもらえる」などの話があったか
- 退職金がもらえる場合、いつもらえるか
は確認すべきだと思いました。
ちなみに僕の会社は給料・ボーナスはすべて手渡しだったので退職金も支給は手渡しだったと考えられます。
そのため受け取りに会社に出向くことを考えると、なおさらいつもらえるかは確認すべきでした。
まとめ
- 退職金が出ると思いきや出なかったという事例もある
- 求人票や就業規則などに退職金の言及があるかをチェックしよう
- 退職金の請求は退職後5年で時効
- 確定拠出年金を退職金代わりとしている会社もある
- 退職金関係の相談は労働局、労働基準監督署で対応してくれる
現時点の結論としては退職金がもらえるかどうかは、勤続年数の条件を満たしたうえで退職金の文言が就業規則や給与規定などに記載されているかがポイントのようです。
逆に僕の元勤務先のように、退職金が求人票のみの記載だと退職金がもらえる確率は低いかもしれません。
何より、自力での解決は難しいのでもしもの時は労働局や労働基準監督署などしかるべき場所へ行って相談しましょう。