著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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最近SNSでも話題になっている「休職代行」というサービス。退職代行についてはこのメディアでも何度か触れてきましたが、今回はその「休職版」とも言える休職代行から見えてくる、職場の構造的な問題について考えていきます。

ブラック企業研究家
長池 涼太
ブラック企業において過労死寸前の長時間労働やパワハラを経験。その経験をもとに大学などでブラック企業の実態やブラック企業で壊されたキャリアの再生方法等を解説。
休職代行とは何か
休職代行サービスは「退職はしたくないが、ご自身の病気やケガで会社をある程度の期間(1か月〜数か月)で休みたい」といった場合に、依頼者に代わって、会社へ休職したい旨の連絡や休職開始までの必要な手続きの調整を行うサービスです。
ご自身で会社とやり取りをする必要がなくプロに対応を任せることができる為「休職したいけど上司に言い出せない、手続きが不安」といった方におすすめです。
休職代行サービス|私のUnion合同労働組合
休職代行とは、ひとことで言えば休職したい本人に代わって、業者がその意思を会社に伝えるサービスです。仕組みとしては退職代行とほぼ同じで、電話や書面などを通じて「休みたい」という意思を会社側に代理で伝達します。
利用者は若手会社員に限らず、40~50代の中間管理職まで幅広い。依頼する理由はさまざま。20代は転職したいが退職へのリスクを感じ、40代以上は責任の重い業務に加えて家族の介護も重なるなどのケースが目立つ。 清水弁護士は「(依頼者は)出社できる状態にない場合も多く、職場との交渉でよりメンタルが悪化する恐れもある」と話す。
清水弁護士によると、依頼者は教職員や自衛官といった公務員という。厳しい人間関係や多忙な業務が背景にあるとみられ、「(公務員は)休職とは別に最大90日間の病気休暇もあったり制度が手厚い。代行を利用すると復職後に気まずいとの声もあるが、大半は復職を機に異動ができる」と清水弁護士。
「どうしても言えない」退職の次は〝休職代行〟にSOS 中間管理職や公務員らが駆け込み(産経新聞) – Yahoo!ニュース
ネットニュースなどを見ていると、退職代行は若い世代の利用者が多いというイメージがある一方、休職代行については年齢層に関わらず、幅広い層に利用が広がりつつあるようです。
「休みたい」と言えない職場が存在するという事実

休職代行のニュースに触れたとき、まず感じたのは「休職代行を使うか使わないか」という是非以前に、本人が『休みたい』と言い出せない職場が、想像以上に多いのではないかということでした。
本来、体調不良やプライベートな事情で休みたいときは、電話一本、あるいは直接の申し出や話し合いで解決するはずです。理屈のうえでは、退職も休職も「連絡すればできる」ことに変わりはありません。
しかし、これは職場に問題がない場合の話です。特にハラスメントを受けているような環境では、話はまったく違ってきます。特定の上司からパワハラやセクハラを受けている場合、
- その上司の名前を見るだけでもつらい
- 電話するという行為そのものが恐怖につながる
- 業務連絡のLINEやメールが来ただけで動悸がする
そこまで追い詰められているケースも、決して珍しくありません。
さらに、休職の相談をした結果として評価が下がる、休むこと自体が「迷惑」として扱われる、あるいは相談しても「甘えだ」といった精神論で片付けられてしまう。こうした空気が職場全体、あるいは特定の上司との関係の中に根付いてしまうと、相談すること自体がリスクになります。結果として、本人は「もう我慢するしかない」と限界を超えて働き続け、心身を壊したり、うつ状態に至ったりするリスクが高まっていきます。
休職を考えたことはあった
僕個人の話になりますが、僕は塾講師をやっていた頃に体調を崩した時期がありました。一時的なものではなく、休みが減らされ残業も大幅に増えて激務の状態が続いていました。
定期的に病院に行っていましたが、一番体調を崩した時はかかりつけの病院からもドクターストップがかかるくらいでした。
就業規則に休職の記載はあったのでルール上は休職を取れる可能性もありましたが、当時の僕はそこまで頭が回らずドクターストップがありながらも無理やり出勤していました。正直休みたいと思うところもありましたが、僕以外にも体調を崩しながら働いてる方も何人かいたので、休職は非常に言いづらい空気感でした。
退職と休職の法律上の違い

退職と休職には、法律上の位置づけに大きな違いがあります。
退職は民法上、たとえば正社員などの無期雇用であれば原則として2週間前までに意思を伝えれば認められるという規定があります。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
民法627条
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
会社の就業規則で「3ヶ月前に申し出ること」などと定められていても、民法の規定が優先されるため、一定の基準が存在します。
一方、休職に関しては民法にも労働基準法にも、法律におけるこれといった明確な規定がありません。つまり、休職のルールは各企業の就業規則次第ということになります。就業規則に休職の定めがあればそれに沿って手続きが進みますが、定めがない場合は話が複雑になりやすい、という違いがあります。
休職代行サービスを選ぶ際に知っておきたいリスク

退職代行をめぐっては、2025年10月に退職代行モームリの家宅捜索、2026年2月に前社長が逮捕されたというニュースもありました。これは、本来「交渉」は労働組合や弁護士でなければ行えないところを、民間の代行業者が有給消化や未払い残業代の交渉といった、いわゆる非弁行為に踏み込んでしまったことが背景にあります。
この構造は休職代行にも同じように当てはまります。休職の手続きには専門的な交渉が絡む場合もあり、民間業者がその領域に踏み込むとグレーゾーン、あるいは違法となるリスクがあります。もし休職代行を利用する場合は、労働組合や弁護士が運営している業者を選ぶことが無難だと考えます。
本当に考えるべきこと

休職代行というサービスについて、退職代行を快く思わない人たちからは「最近の若者は根性がない」といった論調で片付けられがちです。そうした側面がまったくないとは言いませんが、それだけで説明がつく話ではありません。
むしろ見るべきは、休職代行や退職代行を使わざるを得ない職場が存在するという事実そのものです。休職代行というサービスの是非を論じるより、
- 休職代行が「必要になってしまう職場」の問題性
- 休職代行を使わなくても安心して休める職場を増やしていくこと
この2点にこそ、目を向ける価値があると考えています。
「涼しく生きる」では、「働くことで人生を壊す人を減らす」ことをひとつのテーマとして掲げています。休職代行や退職代行といったサービスが存在すること自体を否定はしませんが、本来はそうしたサービスに頼らなくても、安心して休みを取ったり、会社を辞めたりできる職場・社会が増えていくことこそが、健全な姿だと思います。
ブラック企業研究家として、大学・高校等での講演や出張授業も行っています。ご興味のある方は下記のページよりお気軽にお問い合わせください。

